日記 (2023 年 8 月 28 日)
今日は、 1e 弱動詞と 3e 弱動詞の活用を見ていきます。
初めに、 学習ログ 9 でやった 1a 弱動詞の活用を復習しましょう。 ʔ が脱落する影響で、 強動詞の活用形から以下のような変化が起こるのでした。
- ʔ が母音に挟まれる
- ʔ と後続の母音がともに脱落
- ʔ の直後に子音
- ʔ が脱落して代償延長 (Š 型継続相では次の子音が重子音に)
- ʔ が語頭
- ʔ が単に脱落
- N 型
- 一律で ʔ が n に変化
そのため、 活用パラダイムは以下のようになります。 学習ログ 9 では非定形活用はやりませんでしたが、 強動詞の活用形から機械的に上の規則を適用するだけで作れます。
継続相 | 完了相 | 完結相 | 不定詞 | 分詞 | 動形容詞 | |
---|---|---|---|---|---|---|
G 型 | iḫḫaz | ītaḫaz | īḫuz | aḫāzum | āḫizum | aḫzum |
D 型 | uḫḫaz | ūtaḫḫiz | uḫḫiz | uḫḫuzum | muḫḫizum | uḫḫuzum |
Š 型 | ušaḫḫaz | uštāḫiz | ušāḫiz | šūḫuzum | mušāḫizum | šūḫuzum |
N 型 | innaḫḫaz | ittanḫaz | innaḫiz | nanḫuzum | munnaḫzum | nanḫuzum |
これを踏まえて、 1e 弱動詞の活用を見ていきます。
1e 弱動詞とは、 第 1 根素が ʔ3, ʔ4, ʔ5 のいずれかである動詞のことです。 学習ログ 8 で触れたように、 これらの ʔ は、 消失するときに近くにある a や ā をそれぞれ e や ē に変化させました。 これ以外は、 ʔ1, ʔ2 と全く同じ変化を引き起こします。
そのため、 1e 弱動詞の活用形は、 1a 弱動詞の活用形の a や ā をそれぞれ e や ē に変えるだけで作ることができます。 ただし、 D 型継続相のみ例外で、 第 2 根素と第 3 根素の間の a が保たれます。 また、 下の表では分かりませんが、 活用接頭辞の i-/ta-/a-/ni- も i-/te-/e-/ni- に変わります。
継続相 | 完了相 | 完結相 | 不定詞 | 分詞 | 動形容詞 | |
---|---|---|---|---|---|---|
G 型 | ippeš | ītepeš | īpuš | epēšum | ēpišum | epšum |
D 型 | uppaš | ūteppiš | uppiš | uppušum | muppišum | uppušum |
Š 型 | ušeppeš | uštēpiš | ušēpiš | šūpušum | mušēpišum | šūpušum |
N 型 | inneppeš | ittenpeš | innepiš | nenpušum | munnepšum | nenpušum |
注意点として、 三人称女性複数形と二人称複数形にある語尾の -ā は母音調和の影響を受けません。 これは活用の種類によらず成り立ちます。 例えば、 epēšum の継続相二人称複数形は teppešā であって teppešē にはなりません。
第 1 根素が y の動詞も、 1e 弱動詞と全く同じように活用します。 そのため、 第 1 根素が y の動詞は 1e 弱動詞に分類し、 「1y 弱動詞」 という弱動詞の分類は設けないのが普通です。 なお、 第 1 根素が w の動詞は、 1a 弱動詞や 1e 弱動詞とは違う振る舞いをするので、 「1w 弱動詞」 という分類を設けてそこに入れます。 1w 弱動詞はそのうち出てきます。
さて、 次は学習ログ 13 でやった 3a 弱動詞の活用を復習しましょう。 作り方は以下のようになっていました。 ʔ が母音に挟まれているときの規則が 1a 弱動詞のときと違うのが注意点です。
- ʔ が母音に挟まれる
- ʔ が脱落して母音融合
- ʔ が語末
- ʔ が単に脱落
活用パラダイムは以下の通りです。 ここでも非定形活用形を追加しておきました。
継続相 | 完了相 | 完結相 | 不定詞 | 分詞 | 動形容詞 | |
---|---|---|---|---|---|---|
G 型 | imalla | imtala | imla | malûm | mālûm | malûm |
D 型 | umalla | umtalli | umalli | mullûm | mumallûm | mullûm |
Š 型 | ušamla | uštamli | ušamli | šumlûm | mušamlûm | šumlûm |
N 型 | immalla | ittamla | immali | namlûm | mummalûm | namlûm |
3e 弱動詞の活用形は、 3a 弱動詞の活用形の a や ā をそれぞれ e や ē に変えるだけで作れます。 ただし、 G 型継続相, G 型動形容詞, D 型の全体, N 型の全体で、 最初に現れる a が保たれて母音調和しない形も存在しています。 また、 D 型継続相だけ、 最初に現れる a が保たれるのであれば末尾の a も保たれます。 a が保たれる形では、 活用接頭辞の i-/ta-/a-/ni- に含まれる a も保たれます。
継続相 | 完了相 | 完結相 | 不定詞 | 分詞 | 動形容詞 | |
---|---|---|---|---|---|---|
G 型 | ileqqe/ilaqqe | ilteqe | ilqe | leqûm | lēqûm | leqûm/laqûm |
D 型 | uleqqe/ulaqqa | ulteqqi/ultaqqi | uleqqi/ulaqqi | luqqûm | muleqqûm/mulaqqûm | luqqûm |
Š 型 | ušelqe | uštelqi | ušelqi | šulqûm | mušelqûm | šulqûm |
N 型 | illeqqe/illaqqe | ittelqe/ittalqe | illeqi/illaqi | nelqûm/nalqûm | mulleqûm/mullaqûm | nelqûm/nalqûm |
注意点として、 3e 弱動詞で語幹末の母音が e になるところは、 3a 弱動詞のときと活用接尾辞を付けたときの母音融合のパターンが異なります。 語幹の a を e にした後で活用接尾辞を付けるのであって、 活用接尾辞を付けた後に a を e に変えるわけではありません。 例えば、 malûm (3a 弱動詞) の継続相三人称女性複数形は imalla- に -ā を付けるので imallâ ですが、 leqûm (3e 弱動詞) の継続相三人称女性複数形は ileqqe- に -ā を付けるので ileqqeā になります。 a を e に変えれば良いと思って、 ileqqê にしてはいけません。