Avendia19
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日記 (2019 年 8 月 11 日)

定義 7 です。

8 月 9 日にやった定義 4 と同じ構文です。 単語をちょっと確認するだけに留めます。

最初に ἐπίπεδος という新しい単語がありますが、 これは普通に第 2 変化名詞です。 これまでは、 μέροςμῆκος などの -ος で終わるのに第 2 変化ではなく第 3 変化になる名詞ばかりだったので、 逆に怪しんでしまいます。

ということで、 続けて定義 8 です。

まず δύο ですが、 これは 2 を表す基数詞です。 微妙に曲用しますが、 どうやら曲用しないこともあるらしく、 今回はたぶん曲用してません。

δύο
男/女/中
δύο
δυοῖν
δυοῖν
δύο
δύο

その少し後にある μὴ は、 否定辞の一種です。 ギリシャ語の否定辞には οὐμή の 2 種類があり、 οὐ は客観的な事実としての否定を表し、 μή には願望や期待などのニュアンスが含まれます。 否定辞は、 否定したい内容の前に置かれます。

ἀλλήλωνἀλλήλας は、 ともに相互代名詞の ἀλλήλων の曲用形です。 これは、 男性形と中性形で第 2 変化をし、 女性形で第 1 変化をします。 「相互」 という名前だけあって、 2 つ以上のもののお互いを表すので、 単数形は存在しません。 また、 主語に相当する語句を受けて、 主語以外の役割で使われるので、 主格形もありません。 そのため、 辞書形は男性複数属格形の ἀλλήλων となります。

さて、 この文で難しい (というか私が文法を全く知らない) のは、 ἁπτομένωνκειμένων ですね。 これは動詞の分詞の形で、 形容詞と同様に性と数と格に応じて変化し、 他の名詞を修飾して説明したり、 動詞が表す行為中の状況説明をしたりする [§99]。 ここでは、 どちらの単語も中動相現在時制の分詞として使われています。 中動相現在時制の分詞は、 動詞の種類によらず -μενος/-μενη/-μενον という語尾になり、 男性形と中性形は第 2 変化をし、 女性形は第 1 変化をします [§135]。

ἅπτω
分.中.現
単.主ἁπτ-ό-μενοςἁπτ-ο-μένηἁπτ-ό-μενον
単.属ἁπτ-ο-μένουἁπτ-ο-μένηςἁπτ-ο-μένου
単.与ἁπτ-ο-μένῳἁπτ-ο-μένῃἁπτ-ο-μένῳ
単.対ἁπτ-ό-μενονἁπτ-ο-μέηνἁπτ-ό-μενον
単.呼ἁπτ-ό-μενεἁπτ-ο-μένηἁπτ-ό-μενον
複.主ἁπτ-ό-μενοιἁπτ-ό-μεναιἁπτ-ό-μενα
複.属ἁπτ-ο-μένωνἁπτ-ο-μένωνἁπτ-ο-μένων
複.与ἁπτ-ο-μένοιςἁπτ-ο-μέναιςἁπτ-ο-μένοις
複.対ἁπτ-ο-μένουςἁπτ-ο-μέναςἁπτ-ο-μένους
複.呼ἁπτ-ό-μενοιἁπτ-ό-μεναιἁπτ-ό-μενα

ついでなので、 能動相現在時制の分詞も確認しておきます。 能動相現在時制の分詞は、 動詞であれば -ων/-ουσα/-ον という形になり、 男性形と中性形は -ντ 幹第 3 変化をし、 女性形はほぼ第 1 変化ですが少し特殊です [§95]。 -ντ 幹第 3 変化は、 複数与格において語尾の σ の前の ντ が脱落し、 代わりにその前の母音が代償延長を起こします [§57]。

ἅπτω
分.能.現
単.主ἅπτ-ωνἅπτ-ουσαἅπτ-ον
単.属ἅπτ-οντοςἁπτ-ούσηςἅπτ-οντος
単.与ἅπτ-οντιἁπτ-ούσῃἅπτ-οντι
単.対ἅπτ-ονταἁπτ-ούσανἅπτ-ον
単.呼ἅπτ-ωνἅπτ-ουσαἅπτ-ον
複.主ἅπτ-οντεςἅπτ-ουσαιἅπτ-οντα
複.属ἁπτ-όντωνἁπτ-ουσῶνἁπτ-όντων
複.与ἅπτ-ουσιἁπτ-ούσαιςἅπτ-ουσι
複.対ἅπτ-ονταςἁπτ-ούσαςἅπτ-οντα
複.呼ἅπτ-οντεςἅπτ-ουσαιἅπτ-οντα

最後にある κλίσις は、 幹第 3 変化名詞です。 幹 (を含む母音幹) の第 3 変化は、 他の第 3 変化と比べて特殊ないくつかあります。 まず、 単数主格と単数対格と単数呼格以外で、 ではなく -ει という語幹が用いられ、 その結果曲用に ε が出てきます。 また、 属格形では、 母音の音量交換によってアクセントが本来なら不可能な位置に置かれる場合があります。 さらに、 複数対格形は複数主格形の借用で、 本来の語尾である -ας は使われていません。 ・・・こんな感じでいろいろと特殊なので、 理屈を考えるよりそのまま覚えた方が早そうですね。 曲用表は以下の通りです [§62]。

κλίσις
単.主κλίσις
単.属κλίσεως
単.与κλίσει
単.対κλίσιν
単.呼κλίσι
複.主κλίσεις
複.属κλίσεων
複.与κλίσεσι
複.対κλίσεις
複.呼κλίσεις

さて、 問題なのは文構造です。

文頭にある ἐπίπεδοςγωνία ですが、 ここだけを見て 「平面とは角である」 としてしまうと意味不明です。 それに加えて、 直後の動詞 ἑστὶν の直後に があるので、 さらに主格の名詞があることになり、 処理に困ります (どちらかの同格ということもありますが)。 ということで、 ἐπίπεδος γωνία で 1 つの 「平面角」 という主語だと重い、 以下がその補語だと解釈するのが良さそうです。

は女性単数主格形なので、 単数主格形になっている女性名詞に係るわけですが、 そのような名詞を探すと文末の κλίσις 以外ありません。 ということは、 κλίσις の間にある長い単語列は、 κλίσις に係る修飾語句ということになります。 正気か?

まずは ἐν ἐπιπέδῳ ですが、 前置詞の ἐν は与格支配で 「~の中で」 の意味なので、 ここは 「平面の中で」 ですね。 この ἐν は英語の in に相当します。

次の δύο γραμμῶν は、 「2 つの線」 でしょうか。 ただ、 γραμμῶν が属格形なので、 このように解釈するには δύοδυοῖν になっていなければならないはずです。 しかし、 他に δύο が係りそうな主格名詞か対格名詞はありませんし、 δύο 自身が名詞になっているにしても文意が通りません。 調べてみると δύο は不変化のこともあるらしいので、 たぶん γραμμῶν に係るとして良いと思います。

ἁπτομένων ἀλλήλων は分詞句で、 ἁπτομένων が複数属格形なので γραμμῶν を修飾していると見て良いでしょう。 ἅπτω は中動相で 「触れる」 という意味で属格をとるので、 ここは 「互いに触れる」 もしくは 「互いに交わる」 という意味の修飾語句になります。 そのあと καὶ に続いて μὴ ἐπ' εὐθείας κειμένων が来ます。 κειμένων も複数属格形の分詞なので、 ここの καὶἁπτομένων ἀλλήλωνμὴ ἐπ' εὐθείας κειμένων という 2 つの分詞句を並列して繋いでいると解釈できそうです。 μὴ は否定辞なので、 この分詞句は 「直線の上に横たわっていない」 です。

次の πρὸς ἀλλήλας ですが、 πρός は対格を支配すると 「~の方へ」 や 「~に向かって」 を意味するので、 ここは 「互いに向かって」 や 「互いに対して」 と訳せそうです。

最後に κλίσις の前に τῶν γραμμῶν があります。 これは複数属格です。 ところで複数属格の γραμμῶν は、 この長い修飾語句の中で前にも出てきています。 ということは、 この 2 つの γραμμῶν は同格になっていて、 ともに κλίσις を修飾するのではないかと思えます。

以上を踏まえると、 この文の構造は次のように説明できそうです。 まず、 大きな文の骨格は、 ἐπίπεδος γωνία ἐστὶν ἡ κλίσις で 「平面角とは傾きである」 となります。 この κλίσις を修飾する語句として πρὸς ἀλλήλαςτῶν γραμμῶν が係り、 「線のお互いに対する傾き」 という意味になります。 さらに、 この γραμμῶν と同格で ἐνκειμένων が挿入されていて、 「線」 というのが 「平面の中で互いに交わるが直線上にない 2 つの線」 であることを説明しているわけです。

・・・合ってる?

追記 (2019 年 8 月 11 日)

解釈の誤りがあったので訂正します。

この両方の文に出てくる ἐπίπεδος は、 「平らな」 や 「平面の」 を意味する形容詞とするのが正しそうです。 というのも、 定義 8 の方にある ἐπίπεδος γωνία を、 2 つの名詞が 1 つの名詞句を作っているとするより、 形容詞と名詞が 1 つの名詞句になっていると解釈する方が自然だからです。

ただし、 定義 8 では ἐπίπεδος が (単数与格形の ἐπιπέδῳ として) 単独で使われてもいるので、 これは ἐπιφάνειά の省略と見なすか、 ἐπίπεδος が名詞としても使われると解釈する必要があります。 ただ、 ἐπίπεδος が名詞の用法しかないとすると、 定義 15 にある ἐπίπεδον が説明できなくなってしまいます。 ということで、 ἐπίπεδος は基本的には形容詞ですが、 被修飾語の省略によって名詞的に使われることもあるとするのが、 今は妥当に思えます。