前置辞

格の意味を補助するために体言に付けられる離辞を 「前置辞 (preposition)」 と呼ぶ。 前置辞は、 その格の意味の補助の仕方により、 さらに 「補助前置辞 (auxiliary preposition)」 と 「語彙的前置辞 (lexical preposition)」 に大別できる。

補助前置辞は、 付随する名詞の格の用法を明確化する役割をもつ。 1 つの格が表す名詞の意味的役割は多岐に渡るため、 場合によってはどの役割を表しているか不明瞭になり得るが、 補助前置辞はこれを明確化するために用いられる。 例えば、 шетхалу̂ффако хе̂оват という表現において、 ここに表れている хе̂оват は具格形であるが、 具格は話題を表すことも同伴者を表すこともあるため、 これだけでは 「彼についての話」 なのか 「彼とした話」 なのかが曖昧である。 しかし、 сеф が挿入された шетхалу̂ффако сеф хе̂оват という表現は、 сеф が話題を表す補助前置辞であるため、 明確に 「彼についての話」 を意味する。 ただし、 多くの場合で文脈から格の用法が推測できることが多いので、 補助前置辞が明示的に現れる頻度は少ない。

語彙的前置辞は、 続く名詞の格に意味を付加する役割をもつ。 例えば、 вос は 「~の間」 という意味をもっているため、 例えば 〈вос + 名詞 A の処格形〉 は単に 「A において」 ではなく 「A の間において」 の意味になる。 多くの場合で、 〈語彙的前置辞 P + 名詞 A〉 という句は、 〈もともとの A の連性と格をとった P に対応する名詞 + 名詞 A の連体形〉 の形で書き換えられる。 例えば、 вос лоду̂тневу̂си лоду̂тнозам と同じ意味で、 どちらも 「その木々の間において」 を意味する。

なお、 この前置辞の分類は、 あくまで意味的な機能に注目したものである。 前置辞の統語論的な振る舞いはこの分類によらないため、 以降では特に前置辞の種類を区別せずに扱う。

前置辞の用法

前置辞は、 名詞の直前に置かれる。

前置辞が付随する名詞に前から他の句が修飾している場合は、 特殊詞前置辞前置形容詞の順になる。

Бо̀в ве ѐ лоҕу̂ззе асу̂ко аддеду̂ско бамо̀ лоҕу̂ддалов.
この建物の中にも私たちの会社のオフィスがある。

2 の先頭にある бо̀в ве ѐ лоҕу̂ззе の部分の語順に注目されたい。 前置辞 вебо̀в より後ろにあるが ѐ よりは前に置かれている。 結果としてこの ве は、 それが付随する名詞 лоҕу̂ззе と位置的には離れてしまっている。