Avendia19
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目次

初めに

このノートは、 2016 年度 A セメスターに東京大学理学部数学科で開講された 『代数学 III』 の授業ノートである。 内容としては、 体と Galois 理論を扱う。 執筆者の気分によって、 講義で扱われた内容でもここに書いていなかったり、 講義で触れられていない内容が書かれていたりするが、 概ね講義の内容そのままになっている。

実際に講義中で使われた記号や言葉が個人的に気に入らないなどの理由で、 勝手に記号や言葉を変えている場合がある。 環のイデアルは、 2x,y のように、 生成元を普通の丸括弧で囲むのではなく角括弧で囲むことで表している。 集合 A,B に対して AB は真の包含関係を表し、 A=B の場合を含まない。 また、 構造を保った部分集合は単に で表すのではなく で表す。 例えば、 AB と書いてあって B が体であれば、 AB の単なる部分集合であるだけではなく、 AB の部分体であることまで含意する。

体の基本

1

K が単位元をもつ可換環で 0 が極大イデアルになるとき、 Kという。

可換環 K において、 0 が極大イデアルであれば、 まず極大イデアルは全体ではないことから 10 すなわち 01 が分かる。 また、 xK を 0 でない元とすると、 0x が成り立つが、 0 の極大性から x=K となるので、 ある yKxy=1 となるものが存在する。 すなわち、 任意の 0 でない元は乗法に関する逆元をもつ。

可換環 A に対してその極大イデアル 󱁤 をとると A/󱁤 は体になる。 特に、 体 K に対し、 多項式環 K[X] の極大イデアルは既約多項式 (特にモニックであるとして良い) で生成されるものであるから、 既約多項式 PK[X] に対して K[X]/P は体である。 例えば、 󱀑[X] において X2+1 は既約だから、 󱀑[X]/X2+1󱀂 は実際に体になっている。

K をとると、 環の準同型写像 φ:󱀙K は唯一定まる。 実際、 φ(1)=1K だから、 準同型性から φ(n)1Kn 回たしたものにならざるを得ない。 このとき、 準同型定理によって 󱀙/KerφK の部分環 L:=Imφ と同型であるが、 K は体より特に整域なので、 L も整域となり 󱀙/Kerφ も整域である。 したがって、 Kerφ󱀙 の素イデアルであるから、 ある素数 p によって Kerφ=p と書けるか、 Kerφ=0 である。 ここで、 以下の定義が意味をもつ。

2

K に対し、 環の準同型写像 φ:󱀙K をとる。 Kerφ=p を満たす素数もしくは 0 である p を、 K標数といい charK で表す。

3

K の標数を p とする。 p>0 ならば、 K󱀙/p󱀙 と同型な体を含む。 p=0 ならば、 K󱀐 と同型な体を含む。

p>0 であれば、 上で述べた環の準同型写像 φ:󱀙K について、 準同型定理によって Imφ󱀙/p󱀙 である。 ImφK だから、 命題の主張が示された。 p=0 であれば、 Imφ󱀙 であるから K󱀙 と同型な部分環を含む。 󱀙 の商体は 󱀐 であるから K󱀐 と同型な体も含み、 この場合も命題の主張が示された。

4

K の標数を p とし、 p>0 であるとする。 このとき、 体の準同型写像 φ:KK;xxpFrobenius 写像と呼ぶ。 ImφKp と書く。

K,L の間の準同型写像 φ:KL があると、 KerφK のイデアルである。 体のイデアルは 0 から全体だが、 φ(1)=1 より KerφK であるから、 Kerφ=0 である。 したがって、 φ は単射となる。 よって、 Kφ(K)L を同一視することで、 KL の部分であると見なせる。

5

K,L の間に準同型写像 φ:KL があるとき、 LK拡大体といい、 KL部分体という。 この関係があるとき L/K と表す。

6

体の拡大 L/K を考える。 K を含む L の部分体を拡大 L/K中間体という。

以下では、 KL の部分体であるとき、 上で述べた同一視によって KL であるかのように議論を進めることがある。

代数拡大と超越拡大

体の拡大 L/K を考え、 xL をとる。 φx:K[X]L;ff(x) とおくと、 KerφxK[X] の素イデアルになるから、 あるモニック既約多項式 PK[X] によって Kerφx=P と書けるか、 Kerφx=0 である。 したがって、 以下の定義が意味をもつ。

7

体の拡大 L/K を考え、 xL をとる。 φx:K[X]L;ff(x) とおくと、 これは体の準同型写像である。 あるモニック多項式 P によって Kerφx=P と書けるとき、 xK代数的であるといい、 PxK最小多項式という。 Kerφx=0 のときは、 xK超越的であるという。

要するに、 xL が代数的とは、 xK 上多項式の根になっているということである。 x を根にもつ K 上多項式のうち、 次数が最小で最大次の係数が 1 のものが x の最小多項式である。

8

体の拡大 L/K を考える。 L の任意の元が K 上代数的であるとき、 LK代数拡大という。 そうでないとき、 LK超越拡大という。

しばらくの間、 代数的な元について考える。 体の拡大 L/K を考え、 xL をとる。 xK 上代数的なら、 上記で定義した φx に対して、 準同型定理によって K[X]/PImφx が成り立つ。 K[X]/P は体だから、 Imφx も体となる。

9

体の拡大 L/K を考え、 xLK 上代数的であるとする。 このとき、 上記の記号での体 ImφxLx によって K生成される部分体といい K(x) で表す。 また、 xK(x)生成元という。

1 の原始 3 乗根 ω=(1+ 3)/2 をとる。 φ:󱀑[X]󱀂;ff(ω) とすると、 ω2+ω+1=0 だから、 少なくとも KerφX2+X+1 が成り立つ。 X2+X+1󱀑[X] が既約であることが示されれば、 この包含関係は等号となる。 これを示す。 まず、 φ は環の準同型写像 󰔃φ:󱀑[X]/X2+X+1󱀂;ff(ω) を誘導する。 ここで、 󱀑[X]/X2+X+1󱀂 はともに 󱀑-線型空間としての構造をもち、 󰔃φ󱀑-線型写像にもなっている。 dim󱀑󱀂=2 であって、 1 と ω は明らかに 󱀂 上線型独立なので、 線型空間として 󱀂=󱀑󱀑ω となる。 この基底について 1=󰔃φ(1),ω=󰔃φ(X) が成り立つから、 󰔃φ は全射である。 また、 dim󱀑󱀑[X]/X2+X+1=2 も容易に分かる。 したがって、 󰔃φ は次元が有限で等しい線型空間の間の全射線型写像だから、 同型写像になる。 これより、 󰔃φ は環の間の写像としても同型写像である。 󱀂 は体だから、 󱀑[X]/X2+X+1 も体となり、 X2+X+1 は極大イデアルだから X2+X+1 は既約である。 さて、 これにより ω の最小多項式は X2+X+1 で、 󱀑(ω)=󱀂 が分かった。

多項式の既約性の判定には以下の定理が知られている。

10 [Eisenstein の既約性判定法]

主イデアル整域 A に対し、 PA[X] をとる。 P=:Xn+a1Xn1++an とおくとき、 A のある素元 π が存在して、 π は各 ai をわり切り、 π2an をわり切らないとする。 このとき、 A の分数体を K とすれば、 PK[X] 上既約である。

例えば、 X32󱀙[X] を考えると、 󱀙 において各係数 0,2 はともに 2 でわり切れるが 222=4 ではわり切れない。 󱀙 の分数体は 󱀐 だから、 これより X32󱀐[X] で既約である。 したがって、 この根の 1 つである 3 2 の最小多項式が X32 であることが分かる。

さて、 体の拡大 L/K を考え、 xLK 上超越的であるとする。 上で定義した φx は体の準同型写像 󰔃φx:K(X)L; f g f(x) g(x) を引き起こす。 x の超越性から Kerφx=0 だったから、 Ker󰔃φx=0 となり 󰔃φx は単射である。 したがって、 Im󰔃φx は体になる。

11

体の拡大 L/K を考え、 xLK 上代数的であるとする。 このとき、 上記の記号での体 Im󰔃φxLx によって K生成される部分体といい K(x) で表す。 また、 xK(x)生成元という。

以上によって、 体の拡大 L/K があるとき xL が代数的である場合にも超越的である場合にも K(x) が定義された。 実は、 以下の意味で 2 種類の K(x) は同じ性質をもつ。

12

体の拡大 L/K を考え、 xL をとる。 K(x)x を属する最小の K の拡大体である。

証明は適当な本に載っているはずである。

生成される部分体のこの性質から、 生成元が複数個の場合に拡張される。

13

体の拡大 L/K を考え、 部分集合 SL をとる。 S を含む最小の K の拡大体を S によって K生成される部分体といい K(S) で表す。 S=:{x1,,xn} であるときは、 K(S)K(x1,,xn) で表す。

拡大次数

体の拡大 L/K があるとき、 K の積をスカラー倍と見なすことで LK-線型空間と見なせる。

14

体の拡大 L/K において、 K-線型空間としての L の次元を LK拡大次数といい、 [L:K] で表す。 [L:K]< のとき、 LK有限次拡大という。

例えば、 [󱀂:󱀑]=2[󱀐(3 2):󱀐]=3 である。 また、 体の拡大 L/K において、 xLK 上代数的で、 P をその最小多項式とすると、 K(x)K[X]/P だから、 [K(x):K]=degP である。

15

体の拡大 L/K,M/L があるとき、 MK の拡大体と見なせて、 [M:K]=[M:L][L:K] が成り立つ。

m:=[M:L],n:=[L,K] とおくと、 m,n< であれば、 MLmLKn が成り立つ。 したがって、 M(Kn)mKmn なので、 MK-線型空間としての次元は mn である。 したがって、 命題の等式が示された。 m,n の一方が となる場合も同様である。

16

体の拡大 L/KxL に対し、

  1. xK 上代数的である。
  2. x を属する L の部分体で K 上有限次拡大であるものが存在する。

は同値である。

条件 1 条件 2:x の最小多項式を PK[X] とすると、 xK(x) であって [K(x):K]=degP< である。 したがって、 K(x) を考えれば良い。

条件 2 条件 1:条件 2 の有限次拡大を M とする。 φ:K[X]M;ff(x) とおくと、 これは環準同型写像であり、 また K-線型写像でもある。 MK 上有限次元で、 K[X]K 上無限次元なので、 φ は単射ではあり得ない。 したがって、 Kerφ0 なので、 あるモニック既約多項式 PK[X] によって Kerφ=P と書ける。 これは、 xK 上代数的であることを意味する。

17

体の拡大 L/K が有限次拡大であれば、 代数拡大である。

任意の xL をとったとき、 命題 16 の条件 2 における K 上有限次拡大を L 自身にとれば良い。

さて、 体の部分環が再び体となる十分条件として、 以下のことが知られている。

18

体の拡大 L/K に対し、 MLK を含む部分環であって K-線型空間として有限次元であるとする。 このとき、 M は体になる。

0 でない元 xM をとる。 hx:MM;aax を考えると、 これは体の準同型写像かつ K-線型写像である。 M が特に整域だから、 Kerhx=0 となって hx は単射である。 また M は有限次元だから、 hx は同じ有限次元線型空間の間の単射線型写像なので、 同型写像である。 したがって、 h1(1)M が存在し、 これが x の乗法に関する逆元を与える。 x は 0 でない任意の元にとれるから、 M は体である。

19

体の拡大 L/K において、 x,yLK 上代数的であるとする。 このとき、 fK[X,Y] に対して f(x,y)K 上代数的である。

環の準同型写像 φ:K[X,Y]L;gg(x,y) をとる。 また、 PK[X]QK[Y] をそれぞれ x,y の最小多項式とする。 このとき、 P,QKerφ である。 したがって、 φ は環の準同型写像 󰔃φ:K[X,Y]/P,QL;gg(x,y) を引き起こす。 M:=Im󰔃φ とすると、 f(x,y)=φ(f) だから、 f(x,y)M である。

m:=degP,n:=degQ とすると、 {XiYj0i<m,0j<n}K[X,Y]/P,QK-基底となるから、 K[X,Y]/P,Q は特に有限次元である。 したがって、 󰔃φ によるその像 M も有限次元であり、 すなわち MK の有限次拡大である。 さらに、 補題 18 によって M は体になるから、 命題 16 の条件 2 が満たされ、 f(x,y)K 上代数的である。

合成体

20

体の拡大 L/K とその中間体 M1,M2 に対し、 K(M1M2)M1M2合成体といい M1·M2 で表す。

体の拡大 󱀑/󱀐 を考え、 その中間体として 󱀐( 2)󱀐( 3) をとる。 このとき、 [󱀐( 2):󱀐]=[󱀐( 3):󱀐]=2 が成り立つ。 󱀐( 2)󱀐( 3) の合成体は、 この 2 つと 󱀐 を含む最小の体だから 󱀐( 2, 3) である。 ここで、 3󱀐( 2) が成り立つから 󱀐( 2, 3)󱀐( 2) である。 したがって、 [󱀐( 2, 3):󱀐( 2)]1 である。 さらに、 X23󱀐( 2)[X] 3 を根にもつので、 3󱀐( 2) 上最小多項式は 2 次以下である。 すなわち、 [󱀐( 2, 3):󱀐( 2)]2 が分かる。 以上により、 [󱀐( 2, 3):󱀐( 2)]=2 である。 よって、 [󱀐( 2, 3):󱀐]=[󱀐( 2, 3):󱀐( 2)][󱀐( 2):󱀐]=2·2=4 となる。 1, 2, 3, 6󱀐 上線型独立な 󱀐( 2, 3) の元であり、 上の式より 󱀐( 2, 3)󱀐 上 4 次元なので、 これらは基底をなし、 󱀐( 2, 3)=󱀐󱀐 2󱀐 3󱀐 6 が成り立つ。 一方、 1, 2+ 3,5+2 6󱀐 上線型独立で、 ( 2+ 3)2=5+2 6 なので、 これらは全て 󱀐( 2+ 3) の元である。 したがって、 [󱀐( 2+ 3):󱀐]3 が成り立つ。 ここで、 [󱀐( 2, 3):󱀐( 2+ 3)][󱀐( 2+ 3):󱀐]=[󱀐( 2, 3):󱀐]=4 だから、 右辺は 1·42·24·1 のいずれかである。 しかし、 [󱀐( 2+ 3):󱀐]3 であったから、 [󱀐( 2, 3):󱀐( 2+ 3)]=1 である。 すなわち、 󱀐( 2, 3)=󱀐( 2+ 3) が分かった。

準同型写像の個数と最小多項式の分解

21

K とその拡大体 L,K󰎘 をとる。 体の準同型写像 f:LK󰎘f|K=idK を満たすとき、 fK-準同型写像という。 L から K󰎘 への K-準同型写像全体を MorK(L,K󰎘) と書く。

明らかに MorK(L,K󰎘)HomK(L,K󰎘) が成り立つ。 なお、 HomK(L,K󰎘)L から K󰎘 への K-線型写像全体を表す。

22

K とその拡大体 L,K󰎘 をとり、 ある xL によって L=K(x) と表せるとする。 x の最小多項式を PK[X] とするとき、 #{yK󰎘P(y)=0}=#MorK(L,K󰎘) が成り立つ。

L=K(x) だから、 L=K[X]/P と見なせる。 また、 S:={yK󰎘P(y)=0} とおく。 σMorK(L,K󰎘) に対し、 y:=σ(X)L とする。 P=:n󰄚i=1aiXi(aiK) と表せば、 P=0 であって、 σK の元を変えないから、 0=σ(P)=σ(n󰄚i=1aiXi)=n󰄚i=1σ(ai)σ(X)i=n󰄚i=1aiyi=P(y) を得る。 したがって、 yS が分かった。 これより、 写像 Φ:MorK(L,K󰎘)S;σσ(X) が定義できる。 逆に、 yS に対し、 φy:K[X]K󰎘;ff(y) を考えれば、 P(y)=0 だから、 󰔃φy:K[X]/PK󰎘;ff(y) が誘導される。 これは K-準同型写像になるから、 󰔃φyMorK(L,K󰎘) である。 これより、 写像 Ψ:SMorK(L,K󰎘);y󰔃φy が定義できた。 ここで、 ΦΨ は互いに逆写像になっているので全単射である。 したがって、 #S=#MorK(L,K󰎘) が成り立つ。

23

K とその拡大体 L,K󰎘 をとり、 LK の有限次拡大とする。 このとき、 #MorK(L,K󰎘)[L:K] が成り立ち、

  1. が等号で成り立つ。
  2. L の任意の元の K 上最小多項式は、 K󰎘 上で相異なる 1 次式の積に分解する。
  3. ある x1,,xnL が存在して、 L=K(x1,,xn) が成り立ち、 x1,,xn の各 K 上最小多項式が K󰎘 上で相異なる 1 次式の積に分解する。

は同値である。

HomK(L,K󰎘)K󰎘-線型空間と見なす。 n:=[L:K] とすると LKn であるから、 HomK(L,K󰎘)HomK(Kn,K󰎘)HomK(K,K󰎘)nK󰎘n である。 したがって、 dimK󰎘HomK(L,K󰎘)=[L:K] が成り立つ。 これより、 MorK(L,K󰎘) の元が HomK(L,K󰎘) 上線型独立であることを示せば、 線型独立な元の個数は次元以下であることから、 式 が示される。

σ1,,σmMorK(L,K󰎘) を相異なる元とする。 m に関する帰納法で σ1,,σm の線型独立性を示す。 m=1 のときは示すべきことはない。 m2 とする。 σ1,,σm が線型独立でないと仮定すると、 必要ならば添字の順番を入れ替えて、 σm=:m1󰄚i=1aiσi(aiK󰎘) と書ける。 すると、 任意の tL に対して、 この式の両辺に σm(t) をかけることで、 σm(t)σm=m1󰄚i=1aiσm(t)σi が成り立つ。 また、 σm(t)σm=m1󰄚i=1aiσi(t)σi も成り立つ。 したがって、 m1󰄚i=1aiσm(t)σi=m1󰄚i=1aiσi(t)σi を得るが、 帰納法の仮定によって σ1,,σm1 は線型独立だから、 各 i に対して、 aiσm(t)=aiσi(t) が分かる。 もしある iai0 なら、 上式の両辺に ai1 をかけることで、 任意の tL に対して σm(t)=σi(t) を得るが、 これは σmσi が異なるということに矛盾する。 したがって、 全ての iai=0 である。 すると σm は零写像になるが、 零写像は体の準同型写像ではないので、 これは矛盾である。 よって、 σ1,,σm は線型独立である。

条件 1 条件 2:任意に xL をとる。 M:=K(x) とおくと、 包含写像 ι:ML に対して、 MorK(L,K󰎘)HomK(L,K󰎘)MorK(M,K󰎘)HomK(M,K󰎘)-ι-ι は可換である。 また、 条件 1 から、 #MorK(L,K󰎘)=[L:K]=dimK󰎘HomK(L,K󰎘) が成り立つので、 上で述べたように MorK(L,K󰎘)HomK(L,K󰎘) 上線型独立だったから、 基底になる。 同様に、 MorK(M,K󰎘)HomK(M,K󰎘) 上線型独立である。 さらに上の可換性から、 MorK(M,K󰎘)HomK(M,K󰎘) を生成する。 線型独立な生成系は基底だから、 これによって、 #MorK(M,K󰎘)=dimK󰎘HomK(M,K󰎘)=[M:K] を得る。

ここで、 xK 上最小多項式を P とすれば、 M=K[X]/P と見なせる。 さらに、 S:={yK󰎘P(y)=0} とおけば、 補題 22 によって、 #S=#MorK(M,K󰎘) が成り立つ。 PK󰎘 上の多項式であると見なし、 これを 1 次式でわれるだけわって、 P=:(Xa1)(Xa2)(Xak)Q(aiK󰎘,QK󰎘[X]) と表す。 yS をとると、 P(y)=0 だから、 (ya1)(ya2)(yak)Q(y)=0 であるが、 Q(y)0 であるから、 ya1,,ak のいずれかと等しい。 したがって、 #SkdegP を得る。 一方で、 これまでの議論によって、 #S=#MorK(M,K󰎘)=[M:K]=degP が分かっているから、 結局式 は等号で成り立つ。 すなわち、 #S=k であることから a1,,ak は相異なり、 k=degP であることから Q=1 でなければならない。 これは条件 2 の主張そのものである。

条件 2 条件 3:LK の有限次拡大だから、 LK-基底 x1,,xnL がとれる。 これらは特に L を体としても生成するから、 L=K(x1,,xn) である。 また、 条件 2 から x1,,xn の各最小多項式は K󰎘 で相異なる 1 次式の積に分解する。 したがって、 条件 3 が示された。

条件 3 条件 1:n に関する帰納法により示す。 n=1 であれば L=K(x1) であるから、 x1K 上最小多項式を P とし、 S:={yK󰎘P(y)=0} とおけば、 補題 22 によって、 #S=#MorK(L,K󰎘) が成り立つ。 条件 3 によって、 PK󰎘[X] の元として P=:(Xa1)(Xa2)(Xak)(aiK󰎘) と分解でき、 a1,,ak は相異なる。 したがって、 #S=k=degP=[L:K] であるから、 結局 #MorK(L,K󰎘)=[L:K] が成り立ち、 条件 1 が成立する。

n2 とする。 M:=K(xn) とおくと、 L=M(x1,,xn1) である。 まず M:=K(xn) なので、 上の場合の議論によって、 #MorK(M,K󰎘)=[M:K] が成り立つ。 ここで、 σMorK(M,K󰎘) を 1 つとり固定する。 これにより、 K󰎘M の拡大体と見なせる。 各 xi(1in1)K 上最小多項式を PiK[X] とし、 M 上最小多項式を QiM[X] とする。 MK だから、 QiPi をわり切る。 条件 3 により PiK󰎘 上で相異なる 1 次式の積に分解するから、 それをわり切る QiK󰎘 上で相異なる 1 次式の積に分解する。 つまり、 x1,,xn1 の各 M 上最小多項式は K󰎘 上で相異なる 1 次式の積に分解する。 よって、 帰納法の仮定を用いると、 #MorM(L,K󰎘)=[L:M] が得られる。 今、 σ によって K󰎘M の拡大体と見ているので、 MorM(L,K󰎘) の元というのは、 図式 LK󰎘MKτσ において、 M,L,K󰎘 から成る三角形部分を可換にするような体の準同型写像 τ のことである。 これは、 上の議論によって [L:M] 個あることが分かっている。 また、 MorK(M,K󰎘) の元というのは、 上の図式の K,M,K󰎘 から成る三角形部分を可換にするような体の準同型写像 σ のことで、 これは [M:K] 個あることが分かっている。 MorK(L,K󰎘) の元は、 上の図式の K,L,K󰎘 から成る三角形部分を可換にするような τ のことで、 以上の議論によって、 これは MorK(M,K󰎘) の元と MorM(L,K󰎘) の元を定めれば 1 つ定まる。 したがって、 #MorK(L,K󰎘)=#MorM(L,K󰎘)·#MorK(M,K󰎘)=[L:M][M:K]=[L:K] が得られた。 これより、 条件 1 が示された。

なお、 後に述べる分離拡大の言葉を用いて、 この定理の同値な 3 条件を言い換えることができる。 これは定理 45 を参照すること。

根の添加と分解体

24

K と既約多項式 PK[X] に対し、 K[X]/PKP根を添加した体という。

x:=XK[X]/P とすれば、 K[X]/P=K(x) であり K[X]/P 上で P(x)=0 が成り立つ。 すなわち、 どんな多項式であっても、 根を添加した体を考えることによって根をもつようにできるということである。

25

K とモニック多項式 PK[X] をとる。 K の拡大体 K󰎘 に対し、 PK󰎘[X] と見なすと aiK󰎘 たちによって、 P=n󰄖i=1(Xai) と 1 次式の積に分解するとき、 K󰎘P分解体という。 さらに、 K󰎘=K(a1,,an) であれば、 K󰎘P最小分解体という。

多項式をどの拡大体で分解するかによって、 その多項式の分解体が様々に作れることに注意すること。

P:=X32󱀐[X] を考えると、 これは 󱀂[X] において、 P=(X3 2)(X3 2ω)(X3 2ω2) と分解する。 なお、 ω は 1 の原始 3 乗根である。 したがって、 L:=󱀐(3 2,3 2ω,3 2ω2)=󱀐(3 2,ω)󱀂 内の P の最小分解体である。

26

K とモニック多項式 PK[X] に対し、 P の分解体は存在する。

n:=degP に関する帰納法による。 n=0 ならば P=1 だから、 K そのものが P の分解体になる。

n1 とする。 QP なる既約多項式 QK[X] をとり、 L:=K[X]/Q とおく。 LK の拡大体だから P,QL[X] と見なすことができ、 x:=XL とすると Q(x)=0 を満たす。 QP であったから、 P(x)=0 も成り立つ。 したがって、 ある P1L[X] が存在して P=(Xx)P1 と書ける。 degP1<degP だから、 帰納法の仮定によって P1L 上分解体 M が存在する。 このとき、 P1M[X] において 1 次式の積に分解するから、 P=(Xx)P1M[X] で 1 次式の積に分解する。 よって、 MP の分解体でもある。

27

K とモニック多項式 PK[X] をとる。 P の最小分解体 L および K の拡大体 K󰎘 に対し、

  1. K󰎘PK 上分解体である。
  2. 体の K-準同型写像 φ:LK󰎘 が存在する。

は同値である。

条件 1 条件 2:n:=degP に関する帰納法による。 n=0 なら P=1 だから、 L=K である。 したがって、 φ:LK󰎘 を包含写像とすれば良い。

n1 とする。 QP なる既約多項式 QK[X] をとる。 LP の分解体なので、 PL[X] において 1 次式の積に分解するから、 それをわり切る QL[X] で 1 次式の積に分解する。 したがって、 ある aL が存在して Q(a)=0 が成り立つ。 K1:=K(a)L とすると、 ψ:K[X]/QK1;ff(a) は定義できて体の準同型写像となり、 さらに全射である。 体の準同型写像は勝手に単射になるので、 ψ は同型写像である。 よって、 以降は K1=K[X]/Q と見なす。 さて、 K󰎘P の分解体なので、 PK󰎘[X] で 1 次式の積に分解し、 したがって Q も 1 次式の積に分解する。 よって、 ある xK󰎘 がとれて Q(x)=0 が成り立つ。 これにより、 ψ󰎘:K[X]/QK󰎘;ff(x) が定義てきて体の K-準同型写像になる。 この ψ󰎘 によって K1=K[X]/QK󰎘 の部分体と見なす。

PL[X] における 1 次式の分解は、 P(a)=0 だったことを踏まえると、 aiL たちによって、 P=:(Xa)n1󰄖i=0(Xai) と表せる。 また、 aK1 より P=(Xa)P1 を満たす P1K1[X] がとれて、 L[X] においては P1=n1󰄖i=0(Xai) と分解される。 ここで、 L は最小分解体だから L=K(a1,,an1,a) である。 K1=K(a) とおいたから、 L=K1(a1,,an1) でもある。 すなわち、 LP1K1 上最小分解体である。 さらに、 K󰎘PK 上分解体であったから P1K 上分解体にもなっている。 以上により帰納法の仮定が使えて、 体の K1-準同型写像 φ:LK󰎘 が存在する。 さて、 今は ψ󰎘 によって K1K と見なしているから、 図式 LK󰎘K1Kφψ󰎘 は可換である。 したがって、 φK-準同型写像にもなっており、 これが存在を示したいものであった。

条件 2 条件 1:K-準同型写像 φ:LK󰎘 があれば、 これによって LK󰎘 の部分体と見なせる。 LPK 上分解体だから、 その拡大体 K󰎘P の分解体である。

28

K とモニック多項式 PK[X] をとる。 また、 P の最小分解体 L および K の拡大体 K󰎘 をとる。 K󰎘 内の P の最小分解体は、 命題 27 の条件 2 の準同型写像 φ:LK󰎘 の像に一致する。

LK󰎘P の分解体だから、 aiL たちと biK󰎘 たちによって、 P=n󰄖i=1(Xai)=n󰄖i=1(Xbi) と分解される。 φ は多項式環の間の準同型写像 󰔂φ:L[X]K󰎘[X] を誘導するが、 fK の元を変えないから 󰔂f(P)=P が成り立つ。 一方、 上の表示において、 󰔂φ(P)=n󰄖i=1(Xφ(ai)) が成り立つ。 これによって、 K󰎘[X] における P の 2 通りの表示 P=n󰄖i=1(Xφ(ai))=n󰄖i=1(Xbi) が得られたので、 φ(a1),,φ(an)b1,,bn は順番を入れ替えればそれぞれ一致していなければならない。 L=K(a1,,an) だから、 φ(L)=K(φ(a1),,φ(an))=K(b1,,bn) が成り立つ。 この右辺は K󰎘 内の P の最小分解体だから、 命題が従う。

29

K とモニック多項式 PK[X] に対し、 P の最小分解体は一意に存在する。

命題 26 によって最小分解体の存在は保証されている。 さらに命題 28 によって、 それらは全て同型であることが分かる。

例として P:=(X22)(X23)󱀐[X] を考える。 これは 󱀑[X] においては、 P=(X 2)(X+ 2)(X 3)(X+ 3) と分解する。 したがって、 L:=󱀐( 2, 2, 3, 3)=󱀐( 2, 3)=󱀐( 2+ 3)P の最小分解体である。 拡大次数は前に見たように [L:󱀐]=4 である。

次に P:=Xn1󱀐[X](n1) を考える。 ζn を 1 の原始 n 乗根とすれば、 これは 󱀂[X] において、 P=n1󰄖i=0(Xζni) と分解する。 したがって、 L:=󱀐(1,ζn,,ζnn1)=󱀐(ζn)P の最小分解体である。 この拡大次数 [󱀐(ζn):󱀐] は、 1 以上 n 以下の整数の中で n と互いに素なものの個数に一致することが知られている。 別の表現をすれば、 [󱀐(ζn):󱀐]=#(󱀙/n󱀙)× が成り立つ。 このことは後に定理 77 として証明する。

T を不定元とする有理関数体 K:=󱀐(T) を考え、 この上の多項式 P:=XnTK[X](n1) を考える。 ここで、 φ:󱀂[T]󱀂[S];TSn は環の準同型写像を定める。 φ は単射だから、 体の準同型写像 󰔃φ:󱀂(T)󱀂(S); f(T) g(T) f(Sn) g(Sn) を誘導する。 この写像によって 󱀂(T)󱀂(S) と見なす。 したがって、 󱀐(T)󱀂(T)󱀂(S) という体の拡大列ができる。 このとき、 P󱀂(S) において P=n1󰄖i=0(XζniS) と 1 次式の積に分解される。 したがって、 L:=K(S,ζnS,,ζnn1S)=󱀐(S,ζn)P の最小分解体となる。 この拡大次数は、 [L:K]=[󱀐(S,ζn):󱀐(S)][󱀐(S):󱀐(T)]=#(󱀙/n󱀙)×·n である。 なお、 上記のように 󱀂(T)󱀂(S) と見なしたとき、 しばしば Sn T と書かれる。

共役

30

K とその拡大体 L,K󰎘 をとり、 aL とする。 aK 上代数的であるとし、 その最小多項式を PK[X] とする。 このとき、 xK󰎘P(x)=0 を満たすならば、 xa共役であるという。 さらに、 K󰎘P の分解体となるとき、 K󰎘a共役を全て属するという。

󱀐 とその拡大体 L:=󱀐( 2, 3) を考える。 2L󱀐 上最小多項式は P:=X22 であり、 これは L において、 P=(X 2)(X+ 2) と分解されるから、 2, 2L 2 の共役である。

󱀐 とその拡大体 L:=󱀐(ζn) を考える。 なお、 ζn は 1 の原始 n 乗根とする。 ζnLL での共役は、 ζniL(i(󱀙/n󱀙)×) であることが知られている。

󱀐(T) とその拡大体 L:=󱀐(n T,ζn) を考える。 n TL󱀐(T) 上最小多項式は、 Eisenstein の既約性判定法によって P:=XnT であることが分かる。 これは L において、 P=n1󰄖i=0(Xζnin T) と分解されるのであった。 したがって、 ζnin TL(0in1)n TL の共役である。

31

K 、 および K の有限次拡大体 LK の拡大体 K󰎘 をとる。 このとき、

  1. 任意の aL に対し、 K󰎘a の共役を全て属する。
  2. ある a1,,anL が存在して L=K(a1,,an) を満たし、 さらにある P1,,PnK[X] が存在して P1(a1)==Pn(an)=0 であって、 これらは K󰎘[X] の元と見なすと 1 次式の積に分解できる。
  3. K󰎘 の拡大体 K󰎙 と体の準同型写像 φ:LK󰎙 が図式 LK󰎙K󰎘Kφ を可換にするならば、 φ(L)K󰎘 が成り立つ。

条件 1 条件 2:LK の有限次拡大だから、 L=K(a1,,an) を満たすような a1,,anL がとれる。 さらに、 a1,,anK 上最小多項式をそれぞれ P1,,Pn とする。 明らかに、 各 i に対して Pi(ai)=0 が成り立つ。 また、 条件 1 から K󰎘ai の共役を全て属するから、 K󰎘Pi の分解体となり、 PiK󰎘[X] において 1 次式の積に分解する。 以上により、 条件 2 が従う。

条件 2 条件 3:K󰎘 の拡大体 K󰎙 と体の準同型写像 φ:LK󰎙 が条件 3 の図式を可換にしているとする。 条件 2 から、 各 i に対して、 L において Pi(ai)=0 が成り立つ。 図式の可換性によって φK の元を変えないから、 K󰎙 において、 Pi(φ(ai))=φ(Pi(ai))=0 が成り立つ。 ここで、 PiK󰎘[X] において 1 次式の積に分解するから、 ある bijK󰎘 たちによって、 Pi=ni󰄖j=1(Xbij) と表せる。 したがって、 上の式と合わせれば、 各 i に対してある j が存在して φ(ai)=bij が成り立つ。 L=K(a1,,an) であって、 その各生成元 aiφ によって K󰎘 の元に移るのだから、 φ(L)K󰎘 が成り立つ。

条件 3 条件 1:任意に aL をとる。 a の最小多項式を PK[X] とおく。 ここで LK の有限次拡大だから、 L=K(a1,,an) を満たす a1,,anL が存在する。 a1,,an の最小多項式をそれぞれ P1,,PnK[X] とする。 󰔃P:=PP1PnK[X] とおき、 󰔃PK󰎘[X] と見なしたときのこの分解体を K󰎙 とする。 K󰎙[X] において 󰔃P は 1 次式の積に分解するから、 特に P も 1 次式の積に分解する。 その分解を、 bjK󰎙 たちによって P=m󰄖j=1(Xbj) と表すことにする。

j(1jm) を 1 つとって固定する。 ここで、 K0 := K(a) Ki := K(a,a1,,ai) (1in) とおくと、 L の部分体の列 KK0K1Kn=L が得られる。 体の K-準同型写像 φi:KiK󰎙 を以下によって帰納的に定める。

i=0 の場合を考える。 Pa の最小多項式だから、 K0=K(a)K[X]/P が成り立つ。 したがって、 φ0:K[X]/PK󰎙 を定めれば良い。 P(bj)=0 だから、 φ0:K[X]/PK󰎙;ff(bj) が定義でき、 K-準同型写像である。

i1 とし、 φi1:Ki1K󰎙 が定まっていると仮定する。 aiKi の最小多項式を QiKi1[X] とすると、 Ki1 において Pi(ai)=0 であるから QiPi が成り立つ。 これより、 φi1:Ki1K󰎙 は係数にこれを適用することによって φi1:Ki1[X]K󰎙[X] に拡張されるが、 φi1(Qi)φi1(Pi) も成り立つ。 φi1K の元を変えないので、 φi1(Pi)=Pi である。 PiK󰎙[X] において 1 次式の積に分解されるのであったから、 それをわり切る φi1(Qi) も 1 次式の積に分解する。 その分解を、 cikK󰎙 たちによって φi1(Qi)=mi󰄖k=1(Xcik) と表す。 さて、 Ki=Ki1(ai)Ki1[X]/Qi であることを踏まえて、 φi:Ki1[X]/QiK󰎙;󰄚ldlXl󰄚lφi1(dl)ci1 が定義できる。 すなわち、 係数に φi1 を施した多項式に ci1 を代入する写像である。 φi1K-準同型写像であることから、 φiK-準同型写像になる。

以上によって、 図式 LK󰎙K1K󰎘K0Kφnφ1φ0 が得られ、 作り方からこれは可換になる。 よって、 φn に条件 3 が適用できるので、 φn(L)K󰎘 を得る。 ところで、 作り方から φn(a)=bj だから bjK󰎘 が分かる。 j は任意にとれたので、 P の 1 次式の積への分解 P=m󰄖j=1(Xbj)K󰎘[X] における分解にもなるから、 K󰎘P の分解体である。 したがって、 K󰎘a の共役を全て属するから、 条件 1 が示された。

命題の後半の主張については、 上の条件 3 から条件 1 を導いた証明における φn:LK󰎙 が存在を示したい写像になっている。

命題 31 の条件 3 において、 ι:K󰎘K󰎙 を包含写像とすると、 写像 I:MorK(L,K󰎘)MorK(L,K󰎙);σισ が定まるが、 条件 3 はこの I が全射になることを主張している。 一方で、 I は自動的に単射になるので、 これによって I は全単射になる。

32

K、 および K の有限次拡大体 LK の拡大体 K󰎘 をとる。 命題 31 の同値な条件が満たされているとき、 拡大 L/K の中間体 M に対し、 R:MorK(L,K󰎘)MorK(M,K󰎘);σσ|M は全射である。

K,L,K󰎘 が、 命題 31 の同値な条件のうち特に条件 1 を満たしているとする。 このとき、 任意の aL に対して、 aK 上最小多項式 PK[X]K󰎘[X] において 1 次式の積に分解する。

任意に τMorK(M,K󰎘) をとると、 この τ によって K󰎘M の拡大体と見なすことができる。 aM 上最小多項式を QM[X] とする。 PM[X] と見なすと P(a)=0 であるから、 QP が成り立つ。 PK󰎘[X] で 1 次式の積に分解できたのだから、 それをわり切る Q も 1 次式の積に分解する。 したがって、 M,L,K󰎘 に対しても命題 31 の条件 1 が成り立つ。 よって、 命題の後半の主張によって、 体の M-準同型写像 σ:LK󰎘 が存在する。 今、 τ によって K󰎘M の拡大体と見ているのだから、 図式 LK󰎘Mστ は可換である。 すなわち、 R(σ)=σ|M=τ となるから、 R は全射である。

分離多項式

33

K に対し、 多項式 PK[X] を考える。 P の分解体 K󰎘 に対して PK󰎘[X] が相異なる 1 次式の積に分解できるとき、 P分離多項式という。

すなわち、 P が分離多項式であるとは P が重根をもたないということである。

34

K 上の多項式 P:=n󰄚i=0aiXi(aiK) に対し、 P󰎘:=n󰄚i=1iaiXi1P微分という。

これは解析学における通常の関数の微分と同じであるから、 微分に関する線型性や Leibniz 則は成り立つ。

35

K において、 多項式 PK[X] と元 aK を考える。 このとき、

  1. (Xa)2P が成り立つ。
  2. XaP および XaP󰎘 が成り立つ。

は同値である。

XaP が成り立つという条件のもとで、 (Xa)2PXaP󰎘 が同値であることを示せば良い。 まず、 XaP とすると P=(Xa)Q を満たす QK[X] が存在する。 このとき、 (Xa)2P とは Q(a)=0 ということである。 また、 XaP󰎘 とは P󰎘(a)=0 ということである。 ところが、 P󰎘=Q+(Xa)Q󰎘 であるから、 Q(a)=P󰎘(a) が成り立つ。 したがって、 Q(a)=0P󰎘(a)=0 は同値であり、 補題が示された。

36

体の拡大 K󰎘/K と多項式 P,QK[X] をとる。 このとき、

  1. PQK[X] の元として互いに素である。
  2. PQK󰎘[X] の元として互いに素である。

は同値である。

PQ が互いに素であるとは、 その最小公約式が 0 でない定数であるということである。 最小公約式を Euclid の互除法で求めることを考えると、 P,QK[X] の元として考えた場合でも K󰎘[X] の元として考えた場合でも、 手続きは同じである。 したがって、 補題の 2 条件は明らかに同値である。

37

K と多項式 PK[X] に対し、

  1. P は分離多項式である。
  2. PP󰎘 は互いに素である。

は同値である。

P の分解体を K󰎘 とする。 条件 1 が成り立つとすると、 P󰎘K󰎘[X] において相異なる 1 次式の積に分解する。 したがって、 (Xa)2P󰎘 を満たす aK󰎘 は存在しない。 よって補題 35 より、 XaP かつ XaP󰎘 なる aK󰎘 は存在しない。 これは、 aK󰎘XaP を満たせば XaP󰎘 であることを意味している。 すなわち、 P の因子を P󰎘 は因子としてもたないので、 PP󰎘K󰎘[X] で互いに素であることになる。 これより補題 36 から、 PP󰎘K[X] でも互いに素になる。 したがって、 条件 2 が示された。 この議論は逆にも辿れるので、 2 つの条件の同値性が示された。

38

K と既約多項式 PK[X] をとる。 このとき、

  1. P は分離多項式ではない。
  2. p:=charK とおくと p>0 であり、 ある QK[X] が存在して P=Q(Xp) かつ QKp[X] が成り立つ。

は同値である。

条件 1 条件 2:条件 1 が成り立つとする。 このとき、 命題 37 によって PP󰎘 は互いに素ではない。 したがって、 PP󰎘 の最大公約式 Q は 0 であるか 1 次以上の多項式である。 Q0 であるとすると、 QP が成り立つが P は既約なので、 QP に一致しなければならない。 したがって、 QP󰎘 より PP󰎘 を得るが、 微分の定義より degP>degP󰎘 であるからこれは矛盾である。 よって Q=0 であり、 P0 より P󰎘=0 が分かる。 ここで、 P=:n󰄚i=0aiXi(aiK) とおくと、 P󰎘=n󰄚i=1iaiXi1 であるから、 P󰎘=0 より iai=0(1in) が成り立つ。 もし charK=0 であったら、 これより ai=0(1in) となって P は定数になり、 既約性に矛盾する。 したがって、 charK>0 である。

p:=charK とおく。 このとき、 pi ならば ai=0 となる。 したがって、 Q:=󰄚pi0inaiXi/p とおけば、 Q(Xp):=󰄚pi0inaiXi=󰄚0inaiXi=P が成り立つ。 また、 もし 1 次以上の多項式 Q1,Q2 によって Q=Q1Q2 と表すことができるとすると、 P=Q1(Xp)Q2(Xp) となって P の既約性に矛盾するから、 Q は既約である。 さらに、 もし QKp[X] であるとすると、 Q=:m󰄚i=0bipXi(biK) と表せることになるが、 P=Q(Xp)=m󰄚i=0bipXpi=(m󰄚i=0biXi)p となって P の既約性に矛盾するから、 QKp[X] が成り立つ。 以上で、 条件 2 が示された。

条件 2 条件 1:条件 2 の QK[X]Q=:n󰄚i=0aiXi(aiK) と表す。 このとき、 P=Q(Xp)=n󰄚i=0aiXpi であるから、 charK=p であることより、 P󰎘=n󰄚i=1piaiXpi1=0 が成り立つ。 よって、 PP󰎘 は互いに素とはならないから、 命題 37 によって P は分離多項式ではなく、 条件 1 が示された。

有限体

39

有限体の元の個数は必ず素数冪である。

有限体 K を任意にとり、 p:=charK とおく。 p=0 なら、 命題 3 によって K󱀐 を部分体として含むことになり、 K の有限性に矛盾する。 したがって p>0 であるから、 再び命題 3 によって K󱀅p:=󱀙/p󱀙 を含む。 ここで n:=[K:󱀅p] とおくと、 K の有限性から n< である。 これより、 K󱀅p-線型空間として n 次元であり、 󱀅p の元の個数は p であるから、 K の元の個数は pn である。

40

K,K󰎘 の間の準同型写像 σ,τ:KK󰎘 があるとき、 K0:={xKσ(x)=τ(x)}K の部分体である。

体の条件を素直に確かめれば良い。

41

元の個数が素数冪 q=:pn となる体は XqX の最小分解体となり、 それは同型を除いて一意に存在する。

42

元の個数が素数冪 q=:pn となる体 K に対し、 Aut(K) は Frobenius 写像で生成される n 次巡回群である。

上の 2 つの定理を同時に示す。

XqX󱀅p[X] の最小分解体を L とする。 ここで、 (XqX)󰎘=qXq11=10 であるから、 XqX(XqX)󰎘 は互いに素である。 したがって、 命題 37 によって XqX は分離多項式となるから、 これを L[X] の元と見なせば相異なる 1 次式の積に分解する。 これにより、 XqX の根は相異なるから、 L0:={xLxqx=0} は元の個数が q 個の集合である。

さて、 charL=char󱀅p=p0 であるから、 Frobenius 写像 φ:LL が考えられる。 このとき、 L0L0:={xLφn(x)=id(x)} と書けるから、 補題 40 によってこれは体になる。 ところで、 最小分解体の定義から、 L0 の全ての元で 󱀅p 上生成される体が L になるのであった。 一方、 L0 はそれ自身が体であることが示されたので、 󱀅p(L0)L0 である。 これによって LL0 が分かったので L=L0 である。 #L=#L0=q より、 元の個数が q の体が存在することが示された。

元の個数が q の有限体 K を任意にとる。 このとき、 charK=p であり、 K󱀅p を部分体として含む。 σAut(K) を任意にとると、 σ(1)=1 より σ󱀅p の元を変えない。 したがって σMor󱀅p(K,K) である。 逆に σMor󱀅p(K,K) をとると、 K が有限であることから σ は全単射になるので、 σAut(K) が成り立つ。 以上により、 Aut(K)=Mor󱀅p(K,K) である。 すると、 定理 23 によって、 #Aut(K)=#Mor󱀅p(K,K)[K:󱀅p]=n が成り立つ。

Frobenius 写像 φ:KK を考えると、 上の議論によって φAut(K) であるから、 φAut(K) が成り立つ。 i=1,,n1 に対し、 K0:={xKφi(x)=id(x)}={xKxpix=0} とおく。 K0pi 次方程式の根全体の集合だから、 その元の個数は pi 以下である。 したがって、 #K0pi<pn=q より、 K0K が成り立つ。 すなわち φiid であるから、 φAut(K) の位数は n 以上である。 よって、 n#φ#Aut(K) が示された。 式 と合わせれば、 Aut(K)=φ であり、 φ の位数が n であることが分かる。 したがって、 φn=id となるから、 任意の xK に対して xqx=0 が成り立つ。 すなわち、 XqXK[X] 上で XqX=󰄖xK(Xx) という 1 次式の積に分解する。 すなわち、 KXqX の最小分解体である。 定理 29 によって最小分解体は全て互いに同型だったので、 元の個数が q の体の一意性も示された。

43

元の個数が素数冪 q=:pn であるような有限体を 󱀅q と書く。

元の個数が小さい有限体を調べる。 まず、 󱀅4󱀅2 の 2 次拡大である。 したがって、 a󱀅4󱀅2 の最小多項式を P󱀅2[X] とすると、 󱀅4󱀅2[X]/P である。 この P は 2 次の既約多項式である。 󱀅4X4X の最小分解体だから、 󱀅4 の元は全て X4X の根である。 したがって、 PX4X をわり切る。 一方で、 X2X=X(X1)=󰄖x󱀅2(Xx) であり、 P󱀅2 に属さない元の最小多項式だから、 この X2X とは互いに素である。 したがって、 P= X4X X2X=X2+X+1 となる。 これより、 󱀅4󱀅2[X]/X2+X+1 と書ける。

次に、 󱀅8󱀅2 の 3 次拡大である。 󰄖x󱀅8(Xx)=X8X=X(X1)(X3+X2+1)(X3+X+1) であり、 X3+X2+1X3+X+1󱀅2[X] でともに既約多項式であるから、 󱀅8󱀅2[X]/X3+X2+1󱀅2[X]/X3+X+1 となる。

最後に、 󱀅9󱀅3 の 2 次拡大である。 したがって、 a󱀅9󱀅3 の最小多項式を P󱀅3[X] とすれば、 これは 2 次の既約多項式である。 󱀅3 上の 2 次の既約多項式は X2+1,X2X1,X2+X1 の 3 つであることが分かる。 実際、 󰄖x󱀅9(Xx)=X9X=X(X1)(X+1)(X2+1)(X2X1)(X2+X1) が成り立っている。 これより、 󱀅9󱀅3[X]/