日記 (H5338)
人工言語を作る際に、 その人工言語にどのような名前を付けるかというのは結構大きな問題です。 そこで、 忘れないうちに、 フェンナ語の名前の由来についてまとめておきます。
フェンナ語には 「フェンナ語」 という名前が付いているわけですが、 この 「フェンナ」 の部分は、 フェンナ語で (名付け当時に) フェンナ語自身を表す фе̄нне̄о̄рашше の前半要素 фе̄нна から来ています (後半部分は 「~語」 に相当する形態素です)。 ただ、 形態論の改定によって、 現在ではこの要素は фи̂нна になってしまっています。 そのため、 この音に合わせるなら日本語では 「フィンナ語」 と呼ぶべきなのですが、 途中で呼称を変えると混乱を生みかねないため、 日本語での呼称は 「フェンナ語」 を保つことにしました。
では、 この фе̄нна (もしくは фи̂нна) はどこから来たのでしょうか? フェンナ語には架空世界の背景設定があるため、 この問いは、 「架空世界において фи̂нна の語源は何なのか」 と 「現実世界の創作としてなぜ фи̂нна という名前を与えたのか」 という 2 つに分かれます。 順に説明しましょう。
架空世界においては、 фи̂нна はフェンナ語を話す人々の文化や習俗やコミュニティを表す単語で、 「神」 を概ね表す語根 √ф‧н‧ъ の派生語です。 「神が作った民」 のようなニュアンスですね。 すると、 今度はこの語根 √ф‧н‧ъ を構成する 3 つの子音が何に由来しているかが問題になるわけですが、 これは不詳です。 現実世界における英語の god も、 ゲルマン祖語の gudą に由来し、 これはさらに印欧祖語の ǵʰew- もしくは ǵʰewH- などに遡れると考えられているわけですが、 それ以前の由来は不明です。 語源は遡り続ければどこかで由来というものがもはやなくなるわけですが、 フェンナ語については子音語根の時点でほぼその段階になっているというわけです。
では次に、 現実世界の創作として、 私がなぜ фе̄нна という名前を与えることになったのかについて説明しましょう。 そのためには、 なんとシャレイア語の由来に遡る必要があります。
シャレイア語にも、 かつては架空世界の設定がありました。 そこでは、 12 柱から成る神々を信仰する多神教が広まっており、 地域によって特に信奉する神が異なっているという状況でした。 神の人数は少ないですが古代ギリシャに近いのかもしれません。 そのような世界観において、 第 7 神であるシャルを特に信奉する国家が 「シャレイア」 (-eia の部分は国名語尾のようなもの) で、 シャレイア語はその国家の公用語だったので 「シャレイア語」 と呼ばれていたわけです。
シャレイア語を作り始めてしばらくした後、 方針転換によりシャレイア語はこの架空世界の設定を捨てることになるわけですが、 そうなってもこの 12 神をうまく生かす方法はないかと考えていました。 そのような中で、 私がキプソル語を作った辺りから、 自分が作る言語は 12 神にちなんでいくことにしようと思いつきました。 シャレイア語はもともとの設定通り第 7 神のシャルに、 キプソル語は歯車モチーフだったので無機物を司る第 8 神のペンルズに結びつけ、 そして最終的には 12 神に対して 12 言語揃えようというアイデアです。
このアイデアのもと、 フェンナ語は第 11 神であるフェムニアに結びつけることにしました。 フェムニアは人間を司るとされている神です。 これを選んだのは、 当初 (シャレイア語に比べて) 文法が厳密すぎず日常で使いやすい言語を目指そうとしていたので、 人間のための言語というイメージからです。 そして、 フェンナ語の形態論に合うよう 「フェムニア」 をちょっと崩して、 語根 √ф‧н‧ъ と単語 фе̄нна を設定しました。 これが фе̄нна の由来です。 なので究極的には、 言語名の фе̄нна はシャレイア語の神の名前に由来していて、 そしてこの神の名前は単なる思いつきであるためそれ以上の由来はありません。
以上が、 фе̄нна (もしくは фи̂нна) の、 架空世界の設定としての由来と、 現実世界での創作としての由来でした。
さてついでなので、 フェンナ語のシンボル (重なった 2 つの円の左側に縦線が貫いている図形) の由来についてもまとめておきましょう。 これも、 架空世界での由来と現実世界での由来に分かれます。
まず架空世界においては、 このシンボルはフェンナ語自身のシンボルではありません。 そもそも言語にシンボルというものは普通ありません (例えば英語のシンボルはありませんし)。 これは、 フェンナ語圏で信じられている 「大図書館信仰」 と呼ばれる宗教のシンボルで、 лебеври̂ццал と呼ばれているものです。
このシンボルは、 (架空世界における) 古代のシンボリズムに由来しています。 古代では、 人間は理性と精神という 2 つの要素が交ざった存在であると考えられており、 理性を表す記号として真円が、 精神を表す記号として真円に縦線が貫いた形が使われていました。 そして、 この 2 つを重ねた形 (まさに今問題にしているシンボルの形) は、 「全体性」 や 「無限」 を表す記号として定着しました。 一方で、 大図書館信仰において存在が信じられる大図書館は、 いわば全てを収蔵する場所です。 そのため、 この記号がそのままこの信仰のシンボルとしても使われるようになりました。 ちなみに、 大図書館信仰についてはこちらで、 古代の世界観についてはこちらで詳しく扱っています。
一方、 現実世界の創作としてのこのシンボルの由来は非常に明快です。 シンプルに、 フェンナ語で当時 「フェンナ」 と 「言語」 をそれぞれ意味していた фе̄нна と о̄рашше の頭文字を重ねただけです。 結果的に、 二重の円の片方に貫通する線というシンボルとして結構綺麗な形に仕上がったわけですが、 これは本当に偶然です。 言語名 (したがって神の名前) が ф じゃなかったり、 「言語」 に相当する単語が о で始まっていなかったり、 そもそも正書法をキリル文字にしようと思わなかったりしたら、 このシンボルは生まれなかったはずです。
そして、 後からこのシンボルにより深い意味をもたせるために、 先程述べた架空世界における古代の科学観体系を生み出しました。 結果的に、 元素論や惑星記号が整備されて、 現実世界の偶然によって生まれたシンボルに架空世界内での意味付けをすることができたので、 個人的には満足しています。
ちなみに、 形態論の変化により、 「言語」 を意味する о̄рашше は一度 у̂рашше になってしまったのですが、 現実世界でも架空世界でもシンボルに意味がある状況を壊したくなかったので、 語根の方を変えて о̂рашше を維持させました。 ここは恣意的だけど仕方ない…。