Avendia19
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日記 (2018 年 9 月 4 日)

前回は、 通常の圏と同様の形式の極限として、 2-圏の錐状極限について触れた。 そこでは、 2-極限における重みとして 1 への定値関手を用いた。 今度は、 2-極限を考える関手の定義域となる圏が 1 である場合を考えてみよう。 ここで 1 は、 対象として のみをもち、 1-射と 2-射として恒等射のみをもつとすれば、 2-圏になることに注意してほしい。

2-圏 󰒚 に対して、 2-関手 F:1󰒚 を考える。 普通の関手と同様に、 F の像だけで定まるので、 ある 󰒚 の対象 󰔄F と同一視できる。 同様に、 2-関手 W:1Cat もある圏 󰔄W と同一視できる。 この FW によって定まる極限は、 以下に定義するように余テンソル対象と呼ばれる。

1

2-圏 󰒚 に対し、 2-関手 F:1󰒚,W:1Cat があるとする。 上記の通り 󰔄F󰔄W を定めたとき、 limWF󰔄F󰔄W余テンソル対象cotensor object といい、 󰔄W󰔄F で表す。

余極限の場合も同様である。 このとき、 重みとして W:1Cat の代わりに W:1opCat を考える必要があるが、 11op は全く同じ 2-圏なので、 この違いを意識する必要はない。

2

2-圏 󰒚 に対し、 2-関手 F:1󰒚,W:1Cat があるとする。 上記の通り 󰔄F󰔄W を定めたとき、 colimWF󰔄F󰔄Wテンソル対象tensor object といい、 󰔄W󰔄F で表す。

極限で定義される方が余テンソル対象で、 余極限で定義される方がテンソル対象である。 非常にややこしいが、 おそらく歴史的事情なので諦めよう。 なお、 余テンソル対象を冪対象といい、 テンソル対象を余冪対象という流儀もある。 こちらの用語が余計な混乱を招かなくて良いのだが、 積の右随伴として定義される冪対象と紛らわしくなるので、 この日記シリーズでは使わないことにした。

この定義によって、 󰔄F󰔄W の余テンソル対象とは、 任意の 󰒚 の対象 A に対し、 圏の同型 [A,󰔄W󰔄F]󰒚 W,[A,F-]󰒚1Cat [󰔄W,[A,󰔄F]󰒚]CatA に関して自然に成り立つものだと述べることもできる。 同様にして、 テンソル対象については、 圏の同型 [󰔄W󰔄F,A]󰒚[󰔄W,[󰔄F,A]󰒚]CatA に関して自然に成り立つものである。

さて、 テンソル対象に関する重要な命題の 1 つとして、 2 とのテンソル積をもつ 2-圏では、 柱の 2 次元的普遍性が 1 次元的普遍性から自動的に成り立つというものを挙げておこう。 ここで 2 とは、 対象として 0,1 の 2 つをもち、 恒等射以外の射として !:01 のみをもつ通常の圏とする。 2 は以下のような性質をもつ。

3

通常の関手 HomCat(2,-): Cat Set 󰒯 HomCat(2,󰒯) は同型射を反射する。

関手 S:󰒯󰒰 に対し、 写像 S-:Hom(2,󰒯)Hom(2,󰒰) が全単射であるとする。 このとき、 S が同型射になることを示せば良い。 そのために、 S の逆射 T:󰒰󰒯 を構成する。

任意の 󰒰 の射 f:XY に対して、 関手 󰂡f:2󰒰󰂡f0:=X󰂡f1:=Y󰂡f!:=f によって定める。 S- は全単射だから、 関手 Uf:2󰒯 であって SUf=󰂡f となるものが一意に存在する。 そこで、 󰒯 の射 Uf!:Uf0Uf1Tf とおけば、 これによって T の対象と射の対応が定まる。 この対応が関手になることは容易に確かめることができ、 補題が示された。

4

2-小圏 󰒡 と 2-圏 󰒚 および 2-関手 F:󰒡󰒚,W:󰒡Cat に対し、 柱 η:W[L,F-] を考える。 2 条件

がともに成り立つとすると、 η は 2 次元的普遍性も満たす。

η が 1 次元的普遍性を満たすとは、 任意の 󰒚 の対象 A に対して、 集合の間の写像 T: [A,L]0 W,[A,F-]0 f f󰔇ηA に関して自然な全単射になっているということであった。 添字の 0 は、 それが圏ではなく (対象だけを考えて) 集合であることを意味している。 この写像は、 関手 T: [A,L] W,[A,F-] f f󰔇η α α󰔂󰖣η に拡張できる。 ここで、 fα8 月 30 日で定義したものと同じである。 この拡張した T が同型射であることが η が 2 次元的普遍性を満たすということなので、 これを示す。

Set における図式 [2,[A,L]]0[2,W,[A,F-]]0W,[2,[A,F-]]0[2A,L]0W,[2A,F-]0T- を考える。 ここで、 左の垂直な射と右下の垂直な射は、 2A の定義にある同型が定める射である。 また、 下の水平な射は同型射 そのものであり、 右上の垂直な射は自然に定まる同型射である。 すなわち、 この図式において、 上の水平な射以外は全て同型射である。 さらに、 具体的に対象の行き先を調べることで、 この図式は可換であることが示せる。 以上により、 図式中の T- も同型射となり、 補題 3 によって T 自身も同型射になる。

参考文献

  1. G. M. Kelly (1989) 「Elementary observations on 2-categorical limits」 『Bulletin of the Australian Mathematical Society』 39:301–317