Avendia19
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日記 (2018 年 8 月 5 日)

今回は、 普通の圏論でも非常に重要な役割を果たす Yoneda の補題の豊穣圏バージョンを証明しようと思う。

ところで、 モノイダル圏 󰒭 に対して 󰒭-豊穣関手圏が存在するためには、 󰒭 が完備かつ対称モノイダル閉である必要があった。 󰒭 が対称モノイダル閉であると仮定するのは 󰒭 自身を 󰒭-豊穣圏と見なすのに不可欠なので仕方ないとしても、 完備性まで仮定するのは少々強すぎるので、 本題に移る前にこの過程を弱めるための準備をする。

1

完備対称モノイダル閉圏 󰒭 をとり、 󰒭-豊穣小圏 󰒚 および 󰒭-豊穣関手 F,G:󰒚󰒭 を考える。 このとき、 任意の 󰒭 の対象 X に対し、 全単射 Hom󰒭(X,F,G󰒚󰒛){󰒭-豊穣自然変換 γ:XF-G} が成り立ち、 X に関して自然である。

証明の前に、 命題の意味を明確にしておこう。 まず、 命題中に出てくる 󰒭-豊穣関手 XF-:󰒚󰒭 の定義を明確にする。 󰒚 の対象 A,B に対し 󰒭 の射 (XF-)AB:󰒚(A,B)(XFA)(XFB) が定まっているはずである。 これは、 FAB:[A,B]FAFB とテンソル積の随伴で対応する射を FAB:FA[A,B]FB とするとき、 idXFAB:XFA[A,B]XFB と対応する射として定める。 このようにすると、 XF-󰒭-豊穣関手の公理を満たす。 実際、 任意の 󰒚 の対象 A,B,C に対し、 F󰒭-豊穣関手であることから、 [A,B][B,C][A,C][FA,FB][FB,FC][FA,FB]FABFBCcABCFACcFA,FB,FC1 は可換である。 テンソル積の随伴を用いると、 この図式の可換性は、 FA[A,B][B,C]FA[A,C]FA(FAFB)(FBFC)FB(FBFC)FCidcABCidFABFBCFACεFA,FBidεFB,FC の可換性と同値である。 ここで定義から、 例えば FAB=εFA,FB(idFAFAB) であるから、 上の図式において初めに下に行って右に行く合成は、 FA[A,B][B,C]FA[A,C]FB[B,C]FCidcABCFABidFACFBC2 と書き換えられる。 この図式全体に左から X をテンソルし、 図式 1 から図式 2 を得た操作と逆の操作を行えば、 XF- が合成と可換であることを意味する図式が得られる。 他の図式の可換性についても同様の方法で確かめられる。

次に、 命題中の全単射が X に関して自然であるとはどういうことなのか明確にする。 この全単射の右辺の集合を SX と書くことにすると、 󰒭 の対象 X に対し集合 SX を対応させる規則は、 以下のように関手 S:󰒭Set に拡張できる。 󰒭 の射 f:YX に対し、 󰒭-豊穣自然変換 γ:XF-G は、 8 月 1 日の命題 3 によって、 󰒚 の対象 A に対する 󰒭 の射 γA:XFAGA の族であって、 任意の 󰒚 の対象 A,B に対し、 [A,B](XFA)(XFB)GAGB(XFA)GB(XF-)ABGABidγBγAid を可換にするものと見なせる。 ここで、 󰒚 の対象 A に対して δA:=γA(fidFA) とおくと、 これは 󰒭-豊穣自然変換 δ:YF-G を定める。 実際、 任意の 󰒚 の対象 A,B に対し、 YFA[A,B]YFBXFA[A,B]XFBGA[A,B]GBidFABfidfididFABγAidγBGAB を考えると、 上側の矩形部分は明らかに可換で、 下側の矩形部分は図式 全体をテンソル積の随伴で移したものなので可換である。 したがって、 この図式の外周も可換であるが、 これは δ の自然性を表す図式をテンソル積の随伴で移したものであるので、 δ󰒭-豊穣自然変換になっている。 以上により、 (Sf)γ:=δ と定めることで写像 Sf:SXSY が定まり、 これにより S は関手になる。 そして、 命題中の全単射が自然であるとは、 同型な自然変換 Hom(-,F,G)S が存在するということである。

任意に 󰒭 の対象 X をとる。 8 月 2 日の命題 2 の証明と同様の議論により、 同型の違いを除けば、 Hom(X,F,G) の元は、 󰒚 の対象 A に対する 󰒭 の射 mA:XFAGA の族であって、 任意の 󰒚 の対象 A,B に対し、 [A,B]X(FAFB)(FBGB)FAGBX[A,B](FAGA)(GAGB)FABmBσ[A,B],XcFA,FB,GBmAGABcFA,GA,GB が可換になるものである。 この図式をテンソル積の随伴で移すと、 FA[A,B]XFA(FAFB)(FBGB)FB(FBGB)GBFAX[A,B]FA(FAGA)(GAGB)GA(GAGB)idFABmBσ[A,B],XεFA,FBidεFB,GBidmAGABεFA,GAidεGA,GB となる。 ここで、 mA とテンソル積の随伴で対応する射を γA:XFAGA とおく。 すなわち、 γA=εFA,GA(idFAmA) が成り立つ。 この等式などを用いた上で、 適切にテンソル積の順番を入れ替えると、 上の図式は、 XFA[A,B]XFBGA[A,B]GBidFABγAidγBGAB と書き換えられる。 そして、 これをテンソル積の随伴で移した図式が、 まさに γ󰒭-豊穣自然変換であることを表す図式である。 以上により、 全単射 Hom(X,F,G)SX が示された。

この全単射の自然性を確かめる。 そのためには、 任意の 󰒭 の射 f:YX に対し、 Hom(X,F,G)SXHom(Y,F,G)SY-fSf が可換であることを示せば良い。 すなわち、 上の記号において、 族 (mAf)A󰒚 に対応するものが (Sf)γ であることを示す。 しかし、 全単射の定義から、 (mAf)A󰒚 に対応するのは、 󰒭 の各対象 A に対し γA(fidFA):YFAGA が定める 󰒭-豊穣自然変換であり、 これは (Sf)γ そのものである。 したがって、 命題の全単射の自然性も示された。

上の命題の同型が成り立つかどうかというのは、 󰒭 が完備であるかどうかに関わらず言及することができる。 そこで、 以下のように F,G を再定義することにする。

2

対称モノイダル閉圏 󰒭 をとり、 󰒭-豊穣小圏 󰒚 および 󰒭-豊穣関手 F,G:󰒚󰒭 を考える。 ある 󰒭 の対象 N が存在して、 任意の 󰒭 の対象 X に対し、 全単射 Hom󰒭(X,N){󰒭-豊穣自然変換 γ:XF-G}X に関して自然に成り立つとする。 このとき、 NF から G への自然変換対象natural transformation object といい、 F,G󰒚󰒛 で表す。

この定義のもと、 豊穣圏における Yoneda の補題は以下のように定式化できる。

3 [豊穣 Yoneda の補題enriched — lemma] 豊穣 Yoneda の補題enriched — lemma

対称モノイダル閉圏 󰒭 をとり、 󰒭-豊穣小圏 󰒚 および 󰒭-豊穣関手 F:󰒚󰒭 を考える。 任意の 󰒚 の対象 K に対し、 自然変換対象 [K,-],F が常に存在し、 同型 [K,-],FFK が成り立つ。

まず、 󰒭-豊穣関手 [K,-]:󰒚󰒭 の射の対応を明確にしておく。 󰒚 の対象 A,B に対する 󰒭 の射 [K,-]AB:[A,B][K,A][K,B] は、 cKAB:[K,A][A,B][K,B] とテンソル積の随伴で対応する射とする。 これは 󰒭-豊穣関手の公理を満たす。 例えば合成との可換性については、 まず任意の 󰒚 の対象 A,B,C に対し、 [K,A][A,B][B,C][K,A][A,C][K,B][B,C][K,C]idcABCcKABidcKACcKBC は可換である。 この図式において最初に下に行って右に行く合成は、 [K,A][A,B][B,C][K,A][A,C][K,A]([K,A][K,B])([K,B][K,C])[K,C]idcABCid[K,-]AB[K,-]BCcKACε[K,B],[K,C](ε[K,A],[K,B]id) と書き換えることができる。 この図式全体をテンソル積の随伴で移せば、 [A,B][B,C][A,C]([K,A][K,B])([K,B][K,C])[K,A][K,C]cABC[K,-]AB[K,-]BC[K,-]ACc[K,A],[K,B],[K,C] となり、 これは [K,-] が合成と可換であることを表す図式である。 他の 󰒭-豊穣関手の公理についても同様である。

定義 2 により、 任意の 󰒭 の対象 X に対し、 全単射 Hom(X,FK){󰒭-豊穣自然変換 γ:X[K,-]F}X に関して自然に成り立てば良い。

󰒭 の射 h:XFK をとる。 󰒚 の対象 A に対し、 合成 X[K,A]FK[K,A]FAhidFKAγA とおく。 このとき、 󰒚 の対象 A,B に対して、 図式 X[K,A][A,B]X[K,B]FK[K,A][A,B]FK[K,B]FA[A,B]FBidcKABhidhididcKABFKAidFKBFAB を考えると、 上側の矩形部分は明らかに可換で、 下側の矩形部分は図式 2 を得たのと全く同じようにして可換である。 この外周をテンソル積の随伴で移すと、 (X[K,-])AB=idX[K,-]AB=idXcKAB であることに注意して、 [A,B](X[K,A])(X[K,B])FAFB(X[K,A])FB(X[K,-])ABFABidγBγAid を得る。 以上で、 󰒭-豊穣自然変換 γ:X[K,-]F が定まった。

逆に、 󰒭-豊穣自然変換 γ:X[K,-]F をとる。 合成 XX1X[K,K]FKρX1idjXγKh とおけば、 射 h:XFK が得られる。

この 2 つの操作は互いに逆になっていることが、 以下のようにして分かる。 󰒭 の射 h:XFK に対し、 図式 XX1X[K,K]FKFK1FK[K,K]FK(FKFK)FKρX1hidjKhidhidρFK1ididjKidjFKidFKKFKKεFK,FK は可換であることがすぐに分かる。 この図式の外周の可換性は h から始めて操作を 2 回行うともとに戻ることを意味している。 󰒭-豊穣自然変換 γ:X[K,-]F に対しては、 󰒚 の対象 A に対し、 X[K,A]X1[K,A]X[K,K][K,A]X[K,A]FK[K,A]FAρX1idididjKidγKididcKKAγAFKA は可換である。 実際、 右側の平行四辺形部分は を得たのと同じ方法で可換であり、 中央の三角形部分は明らかに可換である。 これより、 γ から操作を 2 回行ってももとに戻ることが分かる。

以上により、 󰒭 の対象 X に対して、 Hom(X,FK){󰒭-豊穣自然変換 γ:X[K,-]F} が示された。 あとはこの全単射が X に関して自然であることを示せば良い。 そのためには、 命題 1 のときと同様に上の式の右辺を SX と書くことにしたとき、 Hom(X,FK)SXHom(Y,FK)SY-fSf が可換であることを確かめれば良い。 すなわち、 󰒭 の射 h:XFK に対応する 󰒭-豊穣自然変換を γ:X[K,-]F として、 hf と対応するのが (Sf)γ であることを示せば良い。 しかし、 hf に対応するのは、 󰒚 の各対象 A に対して γA(fidFA):Y[K,A]FA が定める 󰒭-豊穣自然変換であり、 これは (Sf)γ である。 よって、 示したかった自然性も得られた。

ここで証明した豊穣 Yoneda の補題 [K,-],FFK は、 実は K に関して自然である。 さらに、 󰒭 が完備ならば、 豊穣関手圏 Fun(󰒚,󰒭) が存在するので、 この同型が F に関して自然であるという言及もでき、 実際に自然になっている (はずである)。 この自然性の証明をするには、 実際にやってみると分かるが、 非常に煩雑な計算を行う必要がある。 暇潰しにでもどうだろうか。

参考文献

  1. F. Borceux (1994) 『Handbook of Categorical Algebra: Volume 2』 Cambridge University Press