日記 (H3330)
H3323 の続きです。 前回に引き続き、 新たに追加を提案されている助詞は O で表します。
前回の案とは、 コト名詞を修飾する形容詞 S が節 T を修飾しているという状況において、 T の中に出てくる名詞 C を cok に置き換えてできる新たな節を D とするとき、 S iO’n D という形容詞句で C を修飾した形に書き換えられるというものでした。 一般的に述べると分かりづらいですが、 S, C, T をそれぞれ adozeg, qilxaléh, zèvofos a vas e qilxaléh とすれば、 次の 2 文が同じ意味になるということです。
- salat e adozeg a kin zèvofos a vas e qilxaléh.
- ⁎salat a qilxaléh e adozeg iO’n zèvofos a vas e cok.
さて、 形容詞に係る助接辞の非動詞修飾形は、 動詞に係る同じ助接辞の動詞修飾形と意味的に対応するのでした。 例えば、 C afêc ica D は C fêcat a ca D と (状態か性質かのニュアンスを除けば) 意味は同じです。 そう考えると、 O には動詞修飾形もあって、 C adozeg iO’n D が C dozegat a O’n D と言い換えられるとするのが自然です。 そして、 この後者の形が許されるならば、 限定構文でない dozegat a C O’n D という形も許されるはずで、 もともとの意味を考えるとこれは dozegat a kin T と同じ意味になることが予期されます。 そこでこれを一般化して、 任意の (形容詞として使うことがほとんどないような) 動詞型不定辞の動詞形 S と何らかの助詞 A に対し、 Sos A C O’n D という表現を Sos A kin T の意味で使えるようにするというのが考えられます。
ここで問題となるが、 A がどれなのかが曖昧になるという点です。 O 句以外に助詞句が 1 個しかなければそれが A に相当するものだと分かりますが、 そうでない場合は曖昧です。
これを解決する案としては、 次のようなものがすぐに思い浮かびます。 もともとのアイデアであった形容詞の場合では、 iO 句の中の cok は iO 句が係る形容詞 S の被修飾語を指すのでした。 動詞と形容詞の意味関係の法則により、 動詞型不定辞を形容詞として使ったときの被修飾語は、 それを動詞として使ったときにそこに係る助詞句の 1 つに対応します。 そこで、 その対応する助詞を A だと決めることにすれば良さそうではあります。 ただし、 これを採用するなら、 形容詞としての用法がなくて意味関係がどのタイプになるのか決めていなかった動詞型不定辞に対しても、 O 句が使われた場合の cok が指すものを明確にするために、 意味関係のタイプをきちんと決めないといけなくなります。 まあ決めれば良いだけなので、 大した問題ではないですが。
さて、 cok が指すものが曖昧になるという問題は一旦置いておいて、 O が動詞修飾形で動詞も修飾できるようにすると、 H2227 の案について別の解釈をすることができるようになります。 書き換えの法則を思い出すと、 動詞 S, 名詞 C, 節 T, 助詞 A に対し、 T の中の C を cok に置き換えた節を D とするとき、 Sos A kin T を Sos A C O’n D で言い換えられるというものでした。 例えば、 S, C, T, A をそれぞれ zocèt, sokiq axodol, kûtat a’s e sokiq axodol, e とすると、 次の 2 文が同じ意味になります。
- zocètes a ces e kin kûtat a’s e sokiq axodol.
- ⁎zocètes a ces e sokiq axodol O’n kûtat a’s e cok.
後者は 「彼はそれを持っているという点で高価な時計を自慢した」 と訳すのが良いでしょうか。 そうなると、 O に対応する日本語訳は 「~という点で」 になりそうですね。
この 2 つ目の文において、 どういう点で自慢したのかについて特に言及しないことにして、 O 句を省略しましょう。 これは普通の助詞句の省略で、 特別な規則ではありません。
- ⁎zocètes a ces e sokiq axodol.
さて、 最初の文とこの 3 つ目の文だけを見比べると、 最初の文から省略しても意味が通りそうな kût を省略した結果が 3 つ目の文と考えることもできます。 これがまさに H2227 で提案されている言い換え規則です。 つまり、 O の導入によって、 H2227 の案は、 O を用いて言い換えた後に O 句を省略した結果だと捉え直すことができます。
しかし、 この動詞省略の解釈は、 少し前に述べた A に対応する助詞を動詞ごとに決めてしまうという案と相性がよくありません。 というのも、 動詞ごとに決められたその助詞でしか動詞省略ができなくなるためです。 したがって、 動詞省略を O 句の省略として完全に解釈し直すならば、 A がどの助詞であるかは文脈で判断として曖昧にしておくしかありません。 また、 H2227 で挙げられている次の例文のように、 形容詞に係る助詞句で動詞省略をしたい場合をどう処理するかも微妙です。
- zêhises a ces e sálak acasat ehiv ica gulilsoz.
- 彼は最も頭痛に効果的な薬を作り上げた。
O の導入という案は、 ポテンシャルは高そうですが、 少し問題もありますね。
追記 (H3344)
O が動詞に係る任意の助詞句に対しても使えるようにすると、 本文の最後で挙げたようなコト名詞をとる助詞句を要求する形容詞に困りますね。 そもそも O を動詞に係る助詞句にも使えるようにするという案は、 コト名詞の代わりにモノ名詞を置けるようにする規則に新たな解釈が与えられるという以外に特にメリットがありません。 実際、 本文中にも挙げられている次の 2 文を見てみると、 1 文目の e 句が 2 文目では e 句と O 句に分割されているだけで、 大きな表現力の変化はありません。
- zocètes a ces e kin kûtat a’s e sokiq axodol.
- ⁎zocètes a ces e sokiq axodol O’n kûtat a’s e cok.
一方、 O を形容詞に対して使うという案は、 形容詞のコト名詞の被修飾語を、 形容詞のモノ名詞の被修飾語と形容詞に係る O 句の 2 つに分割できます。 形容詞の被修飾語と形容詞自身に係る助詞句というのは文法的にかなり扱いが違うので、 この言い換えができるというのは大きな表現力の変化になります。
ということで、 O は形容詞に対してしか使えないとするのが良いと現状では感じます。
追記 (H3653)
一旦、 O は形容詞に対してしか使えない (つまり非動詞修飾形しかもたない) 特殊助接辞として造語して、 この案を S 代 7 期で採用することにします。
追記 (H3692)
上記の O は sa として造語しました。
追記 (H3692)
H3766 で sa を動詞に対して使えるようにした方が良い事例を見つけました。
追記 (H4028)
H4028 にもう少し分かりやすいまとめがあります。 また、 sa を動詞に対して使えるようにした方がさらなる例を見つけました。