初めに
ここでは、 不定積分
I:=√ 1+ 1 x2dx
を求めてみる。
高校数学で登場する積分の中ではかなり面倒な方の部類に入るだろう。
久々に積分の計算をしたせいか、 多少苦労してしまったので、 まとめておく。
高校範囲での計算
まず、 x>0 とする。
このとき、 x=:tant(0<t<π/2) とおいて置換積分を行うと、
I = √ 1+ 1 tan2t 1 cos2tdt = 1 sint 1 cos2tdt = sint sin2tcos2tdt = sint (1−cos2t)cos2tdt
となる。
ここでさらに cost=:y とおいて置換積分すれば、
I=− 1 (1−y2)y2dy
を得る。
さて、 積分関数が y の有理式になったので、 部分分数分解を行う。
ここで、
1 (1−y2)y2= A 1+y+ B 1−y+ C y+ D y2
とおき、 分母を払うと、
1=(1−y)y2A+(1+y)y2B+(1−y2)yC+(1−y2)D
を得る。
この式に y=1,−1,0,2 を代入すると、 4 式
{ 1=2B 1=2A 1=D 1=−4A+12B−6C−3D
が成り立つことが分かるので、 これを解いて、
A= 1 2B= 1 2C=0D=1
を得る。
なお、 これは必要条件に過ぎないので、 十分性を確認するため、 最初の式に代入して等号の成立を調べる。
さて、 部分分数分解の結果を代入すれば、
I=−( 1 2 1 1+y+ 1 2 1 1−y+ 1 y2(dy
となる。
C を積分定数としてこれを計算すれば、
I = − 1 2log|1+y|+ 1 2log|1−y|+ 1 y+C = 1 2log| 1−y 1+y|+ 1 y+C
を得る。
ここで y>0 に注意すれば、
y=cost=√ 1 1+tan2t=√ 1 1+x2
であるので、 変数をもとに戻して、
I = 1 2log| 1−√ 1 1+x2 1+√ 1 1+x2|+√ 1+x2+C = 1 2log √ 1+x2−1 √ 1+x2+1+√ 1+x2+C = 1 2log (√ 1+x2−1)2 x2+√ 1+x2+C = log √ 1+x2−1 x+√ 1+x2+C
となる。
次に x<0 の場合を考える。
x=:−X とすれば X>0 だから、 これまでの計算結果を考えれば、
I=log √ 1+X2−1 X+√ 1+X2+C
が成り立つ。
したがって、
I=log √ 1+x2−1 −x+√ 1+x2+C
となる。
以上をまとめて、
√ 1+ 1 x2dx=log √ 1+x2−1 |x|+√ 1+x2+C
となる。
双曲線関数を用いる計算
高校範囲ではないが、 双曲線関数を用いると I の計算はいくぶん安易になる (はずだった)。
x>0 として x=:sinht(t>0) とおけば、
I = √ 1+ 1 sinh2tcoshtdt = √ 1+sinh2t sinhtcoshtdt = cosh2t sinhtdt = 1+sinh2t sinhtdt = ( 1 sinht+sinht(dt
を得る。
ここで、
J:= 1 sinhtdt
とおいて、 この J について考える。
双曲線関数を指数関数で表せば、
J = 2 et−e−tdt = 2et e2t−1dt
となる。
ここで et=:u とおいて置換積分を行えば、
J = 2 u2−1du = ( 1 u−1− 1 u+1(du
となり、 C を積分定数としてさらに計算をすれば、
J = log|u−1|−log|u+1|+C = log| u−1 u+1|+C
を得る。
変数をもとに戻せば、
J=log| et−1 et+1|+C
となる。
これをふまえると、 et>1 より絶対値は外せるので、
I=log et−1 et+1+cosht+C
となる。
さて、 このままでは変数を x に戻せないので、 少々の式変形を行う。
まず、 log の中の分数の分子分母に e−t/2 をかければ、
I = log et/2−e−t/2 et/2+e−t/2+cosht+C = logtanh t 2+cosht+C
を得る。
さらに半角公式を用いて、
I = log√ cosht−1 cosht+1+cosht+C = 1 2log cosht−1 cosht+1+cosht+C
を得る。
最後に cosh を sinh に変換すれば、
I= 1 2log √ sinh2t+1−1 √ sinh2t+1+1+√ sinh2t+1+C
となる。
変数をもとに戻すと、
I= 1 2log √ x2+1−1 √ x2+1+1+√ x2+1+C
となり、 前節と同等の結果を得る。
残りは前節の通りである。