日記 (2019 年 8 月 7 日)

前回は、 層化関手が包含関手の左随伴になっていることを示した。 このことの 1 つの帰結として、 層の圏が余完備であることが分かる。 ついでなので、 層の圏の極限と余極限について、 ここでまとめておく。

定理 4.1.

(󰒚,J) をとる。 ShJ(󰒚) は完備であり、 包含関手 i:ShJ(󰒚)PSh(󰒚) は極限を保存する。 すなわち、 ShJ(󰒚) の極限は PSh(󰒚) の極限として計算できる。

証明.

図式 Φ:󰒡ShJ(󰒚) をとり、 これを前層の図式であると見なした極限を P とする。 すなわち、 P:=lim(iΦ) とおく。 P が層であることを示せば良い。

任意に被覆篩 SJC をとる。 各 j󰒡 に対して Φj は層だから、 命題 1.13 によって、 (Φj)C󰄖fS:DC(Φj)D󰄖fS:DCg:ED(Φj)E は等化子である。 なお、 ここに出てくる射は命題の通りである。 ここで、 等化子と任意の極限は交換するので、 この図式全体の極限をとれば、 PC󰄖fS:DCPD󰄖fS:DCg:EDPE も等化子である。 すなわち、 P は層である。

定理 4.2.

(󰒚,J) をとる。 ShJ(󰒚) は余完備であり、 層化関手 a:ShJ(󰒚)PSh(󰒚) は余極限を保存する。 さらに、 ShJ(󰒚) の余極限は PSh(󰒚) の余極限として計算したものを層化することで得られる。

証明.

図式 Φ:󰒡ShJ(󰒚) および層 GShJ(󰒚) をとる。 定理 3.5 で示した随伴 ai を用いると、 Hom(acolim(iΦ),G) Hom(colim(iΦ),iG) Hom(iΦ,ΔiG) Hom(Φ,ΔG) が成り立ち、 これは G に関して自然である。 なお、 ΔiG,ΔG はそれぞれ iG,G を値とする定値関手である。 この式の最左辺と最右辺を比べることで、 colimΦ=acolim(iΦ) が得られる。 すなわち、 ShJ(󰒚) の余極限を計算するには、 まず PSh(󰒚) の余極限として計算して、 その結果を層化すれば良い。 また、 a:ShJ(󰒚)PSh(󰒚) が余極限を保存するのは、 右随伴をもつことから従う。

定理 4.3.

(󰒚,J) をとる。 層化関手 a:ShJ(󰒚)PSh(󰒚) は有限極限を保存する。

証明.

定理 4.1 によって ShJ(󰒚) の極限は PSh(󰒚) の極限として計算でき、 層化はプラス構成 2 回として定義されていたので、 プラス構成関手 -+:PSh(󰒚)PSh(󰒚) が有限極限を保存することを示せば良い。

有限図式 Φ:󰒡PSh(󰒚) および対象 C をとる。 JC はフィルター圏であるから、 󰒡 上の極限と JC 上の余極限は交換する。 このことから、 (limj(Φj)+)C limj(Φj)+C = limjcolimSHom(S,Φj) colimSlimjHom(S,Φj) colimSHom(S,limjΦj) = (limjΦj)+C が成り立つ。 すなわち、 limj(Φj)+(limjΦj)+ であるが、 これは -+Φ の極限を保存することを意味している。

参考文献

  1. S. MacLane, I. Moerdijk (1992) 『Sheaves in Geometry and Logic』 Springer