日記 (2020 年 6 月 16 日)

定義 12 からです。

πρῶτος ἀριθμός ἐστιν μονάδι μόνῃ μετρούμενος.
素数とは、 単位のみに測られるものである。
πρῶτοςπρῶτος素数の|男.単.主 ἀριθμός ἐστιν μονάδιμονάς単位|単.与 μόνῃμόνοςだけ|女.単.与 μετρούμενοςμετρέω測る|分.受.現.男.単.主.

πρῶτος 「最初の, 素数の」。 これは前置詞の πρό から作られた最上級の形容詞で、 対応する比較級は πρότερος です。

πρῶτοι πρὸς ἀλλήλους ἀριθμοί εἰσιν οἱ μονάδι μόνῃ μετρούμενοι κοινῷ μέτρῳ.
互いに素な数とは、 共通の尺度として単位だけに測られるものである。
πρῶτοιπρῶτος素数の|男.複.主 πρὸς ἀλλήλουςἀλλήλων互い|単.複.対 ἀριθμοί εἰσιν οἱ μονάδιμονάς単位|単.与 μόνῃμόνοςだけ|女.単.与 μετρούμενοιμετρέω測る|分.受.現.男.複.主 κοινῷκοινός共通の|中.複.与 μέτρῳμέτρον尺度|複.与.

κοινῷ < κοινός 「共通の」。 ヘレニズム時代に各国の共通語として用いられたコイネーギリシャ語の 「コイネー」 は、 この単語の女性形である κοινή から来ています。 女性形なのは γλῶσσα 「言語」 や διάλεκτος 「方言」 が女性名詞だからだと思います。

σύνθετος ἀριθμός ἐστιν ἀριθμῷ τινι μετρούμενος.
合成数とは、 ある数に測られるものである。
σύνθετοςσύνθετος合成の|男.単.主 ἀριθμός ἐστιν ἀριθμῷ τινιτιςある|男.単.与 μετρούμενος.

σύνθετος 「合成の」。 συν- 「ともに」 と θετός 「置かれた」 の合成で、 後半の θετόςτίθημι 「置く」 と語源関係があります。 synthetic の語源でもあります。

σύνθετοι δὲ πρὸς ἀλλήλους ἀριθμοί εἰσιν οἱ ἀριθμῷ τινι μετρούμενοι κοινῷ μέτρῳ.
互いに合成な数とは、 共通の尺度としてある数に測られるものである。

2 つ前の文と構造は同じです。

ἀριθμὸς ἀριθμὸν πολλαπλασιάζειν λέγεται, ὅταν, ὅσαι εἰσὶν ἐν αὐτῷ μονάδες, τοσαυτάκις συντεθῇ πολλαπλασιαζόμενος, καὶ γένηταί τις.
数が数をかけると言われるのは、 前者の中に単位がある個数と同じ回数だけかけられる方がたされ、 ある数が生じるときである。
ἀριθμὸς ἀριθμὸν πολλαπλασιάζεινπολλαπλασιάζωかける|不.能.現 λέγεταιλέγω言う|直.受.現.三単, ὅταν, ὅσαιὅσος同じ数の|女.複.主 εἰσὶν ἐν αὐτῷ μονάδεςμονάς単位|複.主, τοσαυτάκιςτοσαυτάκιςその回数 συντεθῇσυντίθημιたす|接.受.ア1.三単 πολλαπλασιαζόμενοςπολλαπλασιάζωかける|分.受.現.男.単.主, καὶ γένηταίγίγνομαι生じる|接.中.ア2.三単 τις.

ὅσαι < ὅσος 「同じ数の」。 関係形容詞の一種です。

τοσαυτάκις 「その回数」。 指示副詞の一種です。 τόσακις という形もあります。

συντεθῇ < συντίθημι 「たす」。 これは接続法受動相アオリスト時制の形なので、 第 6 主要部分から作られます。 τίθημι の語基は基本的に θη- と θε- の 2 種類で、 第 6 主要部分は短い θε- の方を使います。 ここに活用語尾の -θη を付けると有気音が連続することになりますが、 グラスマンの法則によって先頭の気音が脱落するので、 語基は θε- ではなく τε- になります。 この辺ややこしい。

ὅσος は形容詞として μονάδες に係り、 「(単位と) 同じ数の」 という意味で比較の従属節を作っています。 このような比較を表す単語は、 主節にある指示詞と呼応して、 比較する対象を表します [S:§2463, S:§2468]。 実際、 この後に続く節には τοσαυτάκις があるので、 これによって 「単位と同じ数の回数だけ」 の意味になります。

この定義が述べているのは、 例えば 4×5 を計算したければ、 4 の中には単位が 4 つあるので、 それと同じ 4 つ分だけ 5 をたせば (つまり 5+5+5+5 を計算すれば) 良いということです。 乗算を加算の反復として定義してるわけですね。