フランス語の母音衝突

フランス語は、 母音の衝突をかなり避ける。

J'étudie les mathématiques.
私は数学を勉強する。
Mon école est plus loin d'ici que la sienne.
私の学校を彼女の学校よりここから遠い。
Cet avion va atterrir.
この飛行機はまもなく着陸します。

最初の文ではエリジオンが起こっていて、 これにより曖昧母音が消え、 母音の衝突が避けられている。 次の例文では、 本来 ma école となるところを、 母音の衝突を避けるために、 男性形である mon を使っている。 最後の例文では、 本来の ce の代わりに、 cet という母音衝突を避けるための語を用いている。

さて、 ここまでは有名な話だが、 『Le petit prince』 には次のような記述がある。

C'est très utile, si l'on s'est égaré pendant la nuit.
夜に迷子になったりしたらそれはとても役に立つ。

この文の後半は、 本来 si on s'est と続くはずである。 しかし、 on の前につくはずのない定冠詞のような l' が挿入されている。

これも母音衝突を避けるためのフランス語の工夫で、 et, , que, si などの単語の後で、 on の前に定冠詞が挿入されることがあるらしい。

C'est au pied du mur que l'on voit le maçon.
追いつめられたときにこそ、 石工のことが分かる。

ちなみに、 que on ならわざわざ que l'on にせずにエリジオンして qu'on にすれば良い気がするが、 隠語としての意味がある con と発音がかぶってしまうためか避けられるらしい。 ただ、 qu'on を使わないというわけでもないようである。