概要
この学習ログは、 私がアッカド語の文法に関して勉強した内容をまとめたものです。 『ハンムラビ法典』 を始めから解読していくことを第一の目標として、 そのために必要なアッカド語の文法を適宜学ぶという形式になっています。
以下の文献を参考にしています。
- G. P. Hugenberger, N. L. Elickson 『Basics of Akkadian』
- J. Huehnergard 『A Grammar of Akkadian』
- B. Dedović 『eHammurabi』 (こちら)
文法事項を学ぶ順番は Hugenberger–Elickson をベースにしています。 ただしこの本は、 『ハンムラビ法典』 に出てこない形や事象に関する説明が不十分だったり、 読もうとしている文に必要な文法事項の説明が後回しにされていたりなど、 欠点がいくつか見られます。 そこでこの学習ログでは、 適宜 Huehnergard を参照しつつ Hugenberger–Elickson にあるこれらの欠点を補い、 アッカド語文法の学習と 『ハンムラビ法典』 の解読を両立できるように構成し直しています。 この学習ログを最初から通読することで、 アッカド語文法を一から学習しながら 『ハンムラビ法典』 を読むことができるはずです。
『ハンムラビ法典』 本文の楔形文字表記には、 アッカド語学習における慣習に従って、 アッシリアでの文字形を採用しています。 『ハンムラビ法典』 が記されている有名な石柱は古代バビロニアのものなので、 石柱の楔形文字とこの学習ログの楔形文字は形が違うので注意してください。
『ハンムラビ法典』 の日本語訳は、 アッカド語の各単語がどのように解釈されるかが分かりやすように、 できるだけ直訳に近いものにしてあります。
『ハンムラビ法典』 本文まとめ
§1 (5.26~5.32)
- 𒋳 𒈠 𒀀 𒉿 𒈝 𒀀 𒉿 𒇴 𒌑 𒌒 𒁉 𒅕 𒈠 𒉈 𒅕 𒌓 𒂊 𒇷 𒋗 𒀉 𒁲 𒈠 𒆷 𒊌 𒋾 𒅔 𒋗 𒈬 𒌒 𒁉 𒅕 𒋗 𒀉 𒁕 𒀝
- 𒋳šum 𒈠ma 𒀀a 𒉿wi 𒈝lum 𒀀a 𒉿wi 𒇴lam 𒌑u2 𒌒ub 𒁉bi 𒅕ir 𒈠ma 𒉈ne 𒅕er 𒌓tam 𒂊e 𒇷li 𒋗šu 𒀉id 𒁲di 𒈠ma 𒆷la 𒊌uk 𒋾ti 𒅔in 𒋗šu 𒈬mu 𒌒ub 𒁉bi 𒅕ir 𒋗šu 𒀉id 𒁕da 𒀝ak
- šumma awīlum awīlam ubbirma nērtam elīšu iddīma lā uktīššu, mubbiršu iddâk.
- šummašummaもし awīlumawīlum人|単.主 awīlamawīlum人|単.対 ubbir⹀maubburum⹀ma告発する|結.三.男.単⹀そして nērtamnērtum殺人|単.対 elī⹀šueli⹀šu~に⹀接人代|三.男.単.属 iddī⹀manadûm⹀ma罪を負わせる|結.三.男.単⹀そして lālā否 uktīš⹀šukunnum⹀šu証明する|完.三.男.単⹀接人代|三.男.単.対 mubbir⹀šuubburum⹀šu告発する|代接.分.男.単.主⹀接人代|三.男.単.属 iddâknadūkum殺される|継.三.男.単
- もしある人が別の人を告発して彼に殺人罪を負わせて証明しなかったなら、 彼を告発した者は殺されるだろう。
§2 (5.33~5.56)
- 𒋳 𒈠 𒀀 𒉿 𒈝 𒆠 𒅖 𒁉 𒂊 𒇷 𒀀 𒉿 𒅆 𒀉 𒁲 𒈠 𒆷 𒊌 𒋾 𒅔 𒋗 𒊭 𒂊 𒇷 𒋗 𒆠 𒅖 𒁍 𒈾 𒁺 𒌑 𒀀 𒈾 𒀭 𒀀𒇉 𒄿 𒅋 𒆷 𒀝
- 𒋳šum 𒈠ma 𒀀a 𒉿wi 𒈝lum 𒆠ki 𒅖iš 𒁉pi2 𒂊e 𒇷li 𒀀a 𒉿wi 𒅆lim 𒀉id 𒁲di 𒈠ma 𒆷la 𒊌uk 𒋾ti 𒅔in 𒋗šu 𒊭ša 𒂊e 𒇷li 𒋗šu 𒆠ki 𒅖iš 𒁍pu 𒈾na 𒁺du 𒌑u2 𒀀a 𒈾na 𒀭d 𒀀𒇉id2 𒄿i 𒅋il 𒆷la 𒀝ak
- šumma awīlum kišpī eli awīlim iddīma lā uktīššu, ša elīšu kišpū nadû ana Id illak.
- šummašummaもし awīlumawīlum人|単.主 kišpīkišpū魔術|複.対 elieli~に awīlimawīlum人|単.属 iddī⹀manadûm⹀ma罪を負わせる|結.三.男.単⹀そして lālā否 uktīš⹀šukunnum⹀šu証明する|完.三.男.単⹀接人代|三.男.単.対 šaša限関 elī⹀šueli⹀šu~に⹀接人代|三.男.単.属 kišpūkišpū魔術|複.主 nadûnadûm⹀u罪を負わせる|叙.動形.三.男.複⹀従 anaana~へ IdIdイド illakalākum行く|継.三.男.単
- もしある人が別の人に魔術の罪を負わせて証明しなかったなら、 魔術が罪として負わせられた者はイドのもとへ行くだろう。
- 𒀭 𒀀𒇉 𒄿 𒊭 𒀠 𒇷 𒀀 𒄠 𒈠 𒋳 𒈠 𒀭 𒀀𒇉 𒅅 𒋫 𒊭 𒍪 𒈬 𒌒 𒁉 𒅕 𒋗 𒂍 𒍪 𒄿 𒋰 𒁀 𒀠
- 𒀭d 𒀀𒇉id2 𒄿i 𒊭ša 𒀠al 𒇷li 𒀀a 𒄠am 𒈠ma 𒋳šum 𒈠ma 𒀭d 𒀀𒇉id2 𒅅ik 𒋫ta 𒊭ša 𒍪su2 𒈬mu 𒌒ub 𒁉bi 𒅕ir 𒋗šu 𒂍e2 𒍪su2 𒄿i 𒋰tab 𒁀ba 𒀠al
- Id išalliamma, šumma Id iktašassu, mubbiršu bīssu itabbal.
- IdIdイド išalli⹀am⹀mašalûm⹀am⹀ma飛び込む|継.三.男.単⹀来⹀そして šummašummaもし IdIdイド iktašas⹀sukašādum⹀šu打ち負かす|完.三.男.単⹀接人代|三.男.単.対 mubbir⹀šuubburum⹀šu告発する|代接.分.男.単.主⹀接人代|三.男.単.属 bīs⹀subītum⹀šu家|代接.単.対⹀接人代|三.男.単.属 itabbaltabālum取る|継.三.男.単
- 彼はイドに向かって飛び込み、 もしイドが彼を打ち負かしたなら、 その人を告発した者は彼の家を取るだろう。
- 𒋳 𒈠 𒀀 𒉿 𒇴 𒋗 𒀀 𒋾 𒀭 𒀀𒇉 𒌑 𒋼 𒅁 𒁉 𒁀 𒀸 𒋗 𒈠 𒅖 𒋫 𒀠 𒈠 𒄠 𒊭 𒂊 𒇷 𒋗 𒆠 𒅖 𒁉 𒀉 𒁺 𒌑 𒀉 𒁕 𒀝 𒊭 𒀭 𒀀𒇉 𒅖 𒇷 𒀀 𒄠 𒂍 𒈬 𒌒 𒁉 𒊑 𒋗 𒄿 𒋰 𒁀 𒀠
- 𒋳šum 𒈠ma 𒀀a 𒉿wi 𒇴lam 𒋗šu 𒀀a 𒋾ti 𒀭d 𒀀𒇉id2 𒌑u2 𒋼te 𒅁eb 𒁉bi 𒁀ba 𒀸aš 𒋗šu 𒈠ma 𒅖iš 𒋫ta 𒀠al 𒈠ma 𒄠am 𒊭ša 𒂊e 𒇷li 𒋗šu 𒆠ki 𒅖iš 𒁉pi2 𒀉id 𒁺du 𒌑u2 𒀉id 𒁕da 𒀝ak 𒊭ša 𒀭d 𒀀𒇉id2 𒅖iš 𒇷li 𒀀a 𒄠am 𒂍e2 𒈬mu 𒌒ub 𒁉bi 𒊑ri 𒋗šu 𒄿i 𒋰tab 𒁀ba 𒀠al
- šumma awīlam šuāti Id ūtebbibaššūma ištalmam, ša elīšu kišpī iddû iddâk; ša Id išliam bīt mubbirīšu itabbal.
- šummašummaもし awīlamawīlam人|単.対 šuātišū照代|男.単.対 IdIdイド ūtebbib⹀aš⹀šū⹀maubbubum⹀am⹀šu⹀ma無罪とする|完.三.男.単⹀来⹀接人代|三.男.単.対⹀そして ištalm⹀amšalāmum⹀am無事である|完.三.男.単⹀来 šaša限関 elī⹀šueli⹀šu~に⹀接人代|三.男.単.属 kišpīkišpū魔術|複.対 iddûnadûm⹀u罪を負わせる|結.三.男.単⹀従 iddâknadūkum殺される|継.三.男.単 šaša限関 IdIdイド išli⹀amšalûm⹀am飛び込む|結.三.男.単⹀来 bītbītum家|連.単.対 mubbirī⹀šuubburum⹀šu告発する|代接.分.男.単.属⹀接人代|三.男.単.属 itabbaltabālum取る|継.三.男.単
- もしイドがその人を無罪とし彼が無事であったなら、 彼に魔術の罪を負わせた者は殺され、 イドに飛び込んだ者は彼の告発者の家を取るだろう。
§3 (5.57~5.67)
- 𒋳 𒈠 𒀀 𒉿 𒈝 𒄿 𒈾 𒁲 𒉏 𒀀 𒈾 𒅆 𒁍 𒌓 𒍝 𒅈 𒊏 𒁴 𒌑 𒍣 𒀀 𒄠 𒈠 𒀀 𒉿 𒀜 𒅅 𒁍 𒌑 𒆷 𒊌 𒋾 𒅔 𒋳 𒈠 𒁲 𒉡 𒌝 𒋗 𒌑 𒁲 𒅔 𒈾 𒁉 𒅖 𒁴 𒀀 𒉿 𒈝 𒋗 𒌑 𒀉 𒁕 𒀝
- 𒋳šum 𒈠ma 𒀀a 𒉿wi 𒈝lum 𒄿i 𒈾na 𒁲di 𒉏nim 𒀀a 𒈾na 𒅆ši 𒁍bu 𒌓ut 𒍝sa3 𒅈ar 𒊏ra 𒁴tim 𒌑u2 𒍣ṣi2 𒀀a 𒄠am 𒈠ma 𒀀a 𒉿wa 𒀜at 𒅅iq 𒁍bu 𒌑u2 𒆷la 𒊌uk 𒋾ti 𒅔in 𒋳šum 𒈠ma 𒁲di 𒉡nu 𒌝um 𒋗šu 𒌑u2 𒁲di 𒅔in 𒈾na 𒁉pi2 𒅖iš 𒁴tim 𒀀a 𒉿wi 𒈝lum 𒋗šu 𒌑u2 𒀉id 𒁕da 𒀝ak
- šumma awīlum ina dīnim ana šībūt sarrātim uṣiamma awāt iqbû lā uktīn, šumma dīnum šū dīn napištim, awīlum šū iddâk.
- šummašummaもし awīlumawīlum人|単.主 inaina~で dīnimdīnum裁判|単.属 anaana~のために šībūtšībūtum証言|連.単.属 sarrātimšarrātum嘘|複.属 uṣi⹀am⹀mawaṣûm⹀am⹀ma出る|結.三.男.単⹀来⹀そして awātawātum言葉|連.単.対 iqbûqabûm⹀u言う|結.三.男.単⹀従 lālā否 uktīnkunnum証明する|完.三.男.単 šummašummaもし dīnumdīnum裁判|単.主 šūšū照代|男.単.対 dīndīn裁判|連.単.主 napistimnapistum命|単.属 awīlumawīlum人|単.主 šūšū照代|男.単.対 iddâknadūkum殺される|継.三.男.単
- もしある人が裁判で嘘の証言のために来て彼が言った言葉を証明できなかったなら、 もしその裁判が命の裁判であったなら、 その人は殺される。