日記 (2023 年 8 月 11 日)
今日は、 3a 弱動詞, 3y 弱動詞, 3w 弱動詞を一気に見ていきます。
末弱動詞、 すなわち第 3 根素が弱子音であるような動詞は、 第 3 根素がどの弱子音であるかに応じて以下の 4 つに分類されます。 n も弱子音ですが、 第 3 根素が n の動詞は強動詞と同じ変化をするため、 弱動詞には分類されません。
- ʔ1, ʔ2
- 3a 弱動詞
- ʔ3, ʔ4, ʔ5
- 3e 弱動詞
- y
- 3y 弱動詞
- w
- 3w 弱動詞
3e 弱動詞はちょっと面倒なところがあるので、 今日はこれを除いた残りの 3 つを同時に見てしまいます。
学習ログ 8 で触れたように、 ʔ は語末にあるときは単に脱落し、 ʔ が母音に挟まれたときは脱落した上で母音融合が起こるのでした。 3a 弱動詞の活用は、 この規則を単純に適用するだけです。 また、 末弱動詞の y と w についても同じ現象が起こるので、 3y 弱動詞と 3w 弱動詞の活用も同様です。
また、 末弱動詞の母音クラスは、 以下のように第 3 根素によって完全に定まります。
- 3a 弱動詞
- a クラス
- 3y 弱動詞
- i クラス
- 3w 弱動詞
- u クラス
ということで、 G 型継続相の活用は以下のようになります。 語末の母音に注意しましょう。
継 | ||
---|---|---|
三.単 | imalla | |
二.男.単 | tamalla | |
二.女.単 | tamallî | |
一.単 | amalla | |
三.男.複 | imallû | |
三.女.複 | imallâ | |
二.複 | tamallâ | |
一.複 | nimalla |
継 | ||
---|---|---|
三.単 | ibanni | |
二.男.単 | tabanni | |
二.女.単 | tabannî | |
一.単 | abanna | |
三.男.複 | ibannû | |
三.女.複 | ibanniā | |
二.複 | tabanniā | |
一.複 | nibanni |
継 | ||
---|---|---|
三.単 | iḫaddu | |
二.男.単 | taḫaddu | |
二.女.単 | taḫaddî | |
一.単 | aḫaddu | |
三.男.複 | iḫaddû | |
三.女.複 | iḫaddâ | |
二.複 | taḫaddâ | |
一.複 | niḫaddu |
他の型や活用の種類でも全く同じような変化をするので、 活用表は省略します。 代わりに、 まとめとして 3a 弱動詞の三人称男性単数形の一覧表を置いておきましょう。 3y 弱動詞や 3w 弱動詞は、 語末の母音が異なるだけです。
継続相 | 完了相 | 完結相 | |
---|---|---|---|
G 型 | imalla | imtala | imla |
D 型 | umalla | umtalli | umalli |
Š 型 | ušamla | uštamli | ušamli |
N 型 | immalla | ittamla | immali |
これで準備が整ったので、 『ハンムラビ法典』 §1 の続きを読んでいきましょう。 続きは次のようになっています。
- 𒋳 𒈠 𒀀 𒉿 𒈝 𒀀 𒉿 𒇴 𒌑 𒌒 𒁉 𒅕 𒈠 𒉈 𒅕 𒌓 𒂊 𒇷 𒋗 𒀉 𒁲 𒈠 …
- 𒋳šum 𒈠ma 𒀀a 𒉿wi 𒈝lum 𒀀a 𒉿wi 𒇴lam 𒌑u2 𒌒ub 𒁉bi 𒅕ir 𒈠ma 𒉈ne 𒅕er 𒌓tam 𒂊e 𒇷li 𒋗šu 𒀉id 𒁲di 𒈠ma
- šumma awīlum awīlam ubbirma nērtam elīšu iddīma….
最初の nērtam は、 nērtum 「殺人」 の単数対格形です。 次の elīšu は、 前置詞の eli に接尾人称代名詞の šu が付いた形で、 「彼に対して」 のような意味になります。 学習ログ 11 でやったやつですね。
最後の iddīma は、 ちょっと厄介です。 まず、 ma の部分は 「そして」 を意味する小辞でした。 では iddī は何かというと、 これは √n-d-y の G 型動詞 nadûm の完結相三人称単数形です。 これは、 第 1 根素が n なので 1n 弱動詞であり、 さらに第 3 根素が y なので 3y 弱動詞でもある、 いわゆる 「重弱動詞 (doubly weak verb)」 です。 そのため、 1n 弱動詞の特徴である n と同化と 3y 弱動詞の特徴である y の脱落が両方起きていて、 規則的な形である indiy が最終的に iddi という形になっています。 最後の i が長音になっているのは、 ma が付いた影響です。
nadûm は 「罪を負わせる」 のような意味なので、 ここまでの文全体は 「もし人が人を告発して彼に殺人罪を負わせて」 と訳せます。