日記 (2020 年 8 月 20 日)
今日は、 到達可能関手のコンマ圏が到達可能になることを示し、 その系として到達可能関手が解集合条件を満たすことを示す。
まず、 コンマ圏の余極限が以下のように得られることを思い出そう。
命題 8.1.
関手 Φ:→,Ψ:→ をとり、 コンマ圏からの忘却関手をそれぞれ U:Φ↓Ψ→,V:Φ↓Ψ→ とする。
さらに、 図式 F:→Φ↓Ψ について、 C:=colim(FU) と D:=colim(FV) が存在し、 Φ は余極限 C を保存するとする。
このとき、 ΦC の普遍性によって得られる の射 h:ΦC→ΨD は、 Φ↓Ψ の対象として colimF を与える。
このことから、 コンマ圏の対象が表示可能になるための十分条件が得られる。
補題 8.2.
正則基数 κ をとる。
関手 Φ:→,Ψ:→ を考える。
コンマ圏 Φ↓Ψ の対象 h:ΦC→ΨD に対し、 ΦC と ΨD がともに で κ-表示可能ならば、 h は Φ↓Ψ で κ-表示可能である。
さらに、 到達可能関手のコンマ圏が到達可能になることが分かる。
定理 8.3.
到達可能関手 Φ:→,Ψ:→ に対し、 コンマ圏 Φ↓Ψ は到達可能である。
証明.
定理 7.5 により、 ある正則基数 κ がとれて、 Φ と Ψ がともに κ-到達可能かつ κ-表示対象を保つようにできる。
すると、 と はともに κ-有向余極限をもち、 さらに Φ は κ-有向余極限を保つから、 命題 8.1 によって Φ↓Ψ は κ-有向余極限をもつ。
さらに、
:={h∈Φ↓Ψ:ΦC→ΨD∣ΦC と ΨD はともに κ-表示可能}
とおくと、 補題 8.2 によってこの元は全て κ-到達可能である。
また、 定理 4.5 によって の κ-到達可能対象は同型の違いを除いて集合サイズしかないから、 は本質的小である。
したがって、 あとは Φ↓Ψ の任意の対象が の元の κ-有向余極限として表せることを示せば良い。
任意に Φ↓Ψ の対象 f:ΦC→ΨD をとる。
すると、 の κ-表示可能対象の κ-有向図式 F:→ とその余極限余錐 (ci:Fi→C)i∈ がとれる。
同様に、 の κ-表示可能対象の κ-有向図式 G:→ とその余極限余錐 (di:Gk→D)k∈ もとれる。
これを用いて、
:={h:ΦFi→ΨGk|
ΦFiΦCΨGkΨDΦciΨdkhf
が可換
{
とおく。
さらに、 上の順序関係 ≤ を次のように定める。
すなわち、 の元 h:ΦFi→ΨGk,h:ΦFi→ΨGk に対し、 i≤i かつ k≤k であって、
ΦFiΦFiΨGkΨGkhh
が可換になるとき、 h≤h であると定義する。
以下、 この順序によって が κ-有向になることを示す。
の元からなる集合 {hl:ΦFil→ΨGkl}l∈L であって濃度が κ 未満のものをとる。
は κ-有向だから、 {il}l∈L の上界 i がとれる。
同様に、 {kl}l∈L の上界 k もとれる。
ここで、 Φ は κ-表示可能対象を保つので、 ΦFi は で κ-表示可能である。
また、 Ψ は κ-有向余極限を保つので、 (Ψdk:ΨGk→ΨD)k∈ は 内の κ-有向余極限である。
したがって、 ある の対象 k が存在して、
ΦFiΦCΨDΨGkΦcifgΨdk
という分解ができる。
ここで、 この k が k であるとしても一般性は失われない。
実際、 そうでなければ k と k の上界を改めて k とおけば良い。
さて、 各 L の元 l に対し、
ΦF❲il↪i❳gΨdk = ΦF❲il↪i❳Φcif = Φcilf = hlΨdkl = hlΨG❲kl↪k❳Ψdk
が成り立つ。
ΦFil は κ-表示可能であって (Ψdk:ΨGk→ΨD)k∈ は κ-有向余極限だから、 分解の本質的一意性によって、 の対象 kl が存在して、 k≤kl であって、
ΦF❲il↪i❳gΨG❲k↪kl❳=hlΨG❲kl↪k❳ΨG❲k↪kl❳
が成り立つ。
このようにして得られた の対象の集合 {kl}l∈L の上界 k をとると、 任意の L の元 l に対し、
ΦF❲il↪i❳gΨG❲k↪k❳=hlΨG❲kl↪k❳
が一斉に成り立つ。
図式で書けば、
ΦFilΦFiΨGkΨGklΨGkhlg
は可換である。
これはすなわち、 この右辺の垂直な射を h:ΦFi→ΨGk とおけば、 h は {hl}l∈L の上界であるということである。
以上により、 は κ-有向である。
さて、
H: ⟶ Φ↓Ψ h ⟼ h
とおくと、 これは の元の κ-有向図式である。
さらに、 これの余錐 ((ci,dk):Hh→f)h∈:ΦFi→ΨGk が余極限になることが容易に示せる。
これにより、 f が の元の κ-有向余極限として表せた。
この定理の系として、 到達可能関手は解集合条件を満たすことが示せる。
定義 8.4.
関手 Φ:→ をとり、 次の条件を満たすとする。
任意の の元 D に対し、 の射から成る集合 {gl:D→ΦCl}l∈L が存在して、 任意の の射 f:D→ΦC に対し、 ある L の元 l と の射 h:Cl→C が存在して、
DΦCΦClfglΦh
が可換になる。
このとき、 Φ は解集合条件 (solution set condition) を満たすといい、 {gl:D→ΦCl}l∈L を D の解集合 (solution set) という。
定理 8.5.
到達可能関手 Φ:→ に対し、 Φ は解集合条件を満たす。
証明.
任意に の元 D をとる。
定理 8.3 により、 ある正則基数 κ について D↓Φ は κ-到達可能である。
ここで、 :=Ob(Presκ(D↓Φ)) が解集合になることを示す。
任意に の射 f:D→ΦC をとる。
これは D↓Φ の対象だから、 D↓Φ の κ-表示可能対象の κ-有向図式 F:→D↓Φ が存在して、 f=colimF と書ける。
その余極限余錐を (ci:Fi→f)i∈ とおく。
ここで、 特に は空でないから、 の対象 i を 1 つ選べば、 D↓Φ の射 ci:Fi→f が存在することになる。
Fi が の射として Fi:D→ΦCi であるとすれば、 これは、
DΦCΦCifFiΦci
が可換であるということである。
Fi は κ-表示可能だから、 同型の違いを除いて の元である。
したがって、 f は の元を経由する形で分解できる。
以上により、 は解集合である。
参考文献
- J. Adámek, J. Rosický (1994) 『Locally Presentable and Accessible Categories』 Cambridge University Press