日記 (2018 年 9 月 3 日)
前回は、 2-圏における極限を、 豊穣圏における重み付き極限として定義した。 したがって、 2-極限を考えるためには、 極限を考える図式を与える関手の他に、 重みを与えるもう 1 つの関手が必要であった。 しかし、 普通の圏での極限には重みという概念はない。 なぜ重みが必要になったのかを考えると、 8 月 6 日で述べたように、 一般の豊穣圏において定値関手がうまく定義できないからであった。
2-小圏
一般の 2-極限は普遍性をもつ柱として特徴付けられた。
錐状極限は、
まず、 柱
以上により、 重みが
2-小圏
- 任意の
の 1-射 に対し、u : I → J は可換である。A F I F J σ I σ J F u - 任意の
の 2-射 に対し、ω : u ⇒ v : I → J は等しい。A F I F J σ I F u F v F ω A F J σ J σ J id
このとき、 族
最初の条件は、 普通の圏での極限を考えるときにお馴染みの錐と全く同じである。 2-圏には 2-射が存在するので、 2-圏における錐を考えるときは、 上の定義中の 2 つ目の条件が追加で課されることになる。
柱の 2 次元的普遍性には柱の間の自然調整が出てくるので、 重みとして
以上により、 重みが
2-小圏
- 任意の
の 1-射 に対し、u : I → J は等しい。A F I F J F u σ I τ I Ξ I A F J σ J τ J Ξ J
このとき、 族
これらの議論により、 錐の普遍性は以下のように述べることができる。
2-小圏
- 任意の錐
に対し、 ある σ : A ⇓ F の 1-射 が一意に存在し、 任意のf : A → L の対象 に対して、I は可換である。A L F I σ I f η I
このとき、
2-小圏
- 任意の錐
と任意の錐の射 σ , τ : A ⇓ F に対し、 ある Ξ : σ ⇛ τ の 2-射 が一意に存在し、 任意のα : f ⇒ g の対象 に対して、I は等しい。 ここで、A L F I η I f g α A F I σ I τ I Ξ I の 1-射 はf , g の 1 次元的普遍性によりそれぞれ η から得られるものとする。 σ , τ
このとき、
ここまで見てきたように、 これらは単に柱の 2 種類の普遍性を言い換えただけであるから、 命題 4.5 によって 2 種類の普遍性を満たす錐は錐状極限を定める。
なお、 一般の豊穣圏において錐状極限のようなものを考えることができないというわけではない。 これについては、 Kelly†1 の 3.8 節を参照すると良い。
参考文献
- G. M. Kelly (1985) 『Basic Concepts of Enriched Category Theory』 Cambridge University Press
- G. M. Kelly (1989) 「Elementary observations on 2-categorical limits」 『Bulletin of the Australian Mathematical Society』 39:301–317